2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17829
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
堀 真子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (00749963)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 温泉 / 堆積物 / 鉄 / 希土類元素 / 深部流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、紀伊半島の海沿いから内陸にかけて、広く温泉水の調査を実施した。酸素・水素安定同位体比と微量元素組成から、和歌山県の花山温泉について、プレートから脱水した深部流体の特徴が見られること、白浜温泉は、海水型から深部停滞地下水との混合水を起源とすることが明らかになった。特に、リチウム・ホウ素・塩素を使ったダイアグラムでは、花山温泉にて顕著なリチウムの欠乏が見つかった。このことは、リチウムの相対濃度を用いて、熱源の推定ができる可能性を示唆する。 温泉水および堆積物の希土類元素分析では、試料に含まれるバリウムの質量干渉が顕著であったため、今年度はキレートを用いて希土類元素を分離した後、再分析を実施した。この結果、ユウロピウムの異常は小さく、期待していた深部での水―岩石反応を再考する必要がでてきた。 一方、鉄を用いた表層環境解析では、9月下旬の3日間、連続観測を行った。測定項目は、溶存酸素・光量・過酸化水素・二価鉄・全鉄とし、1~2時間に1度の頻度で分析を行った。この結果、直射日光のあたるわずかな時間に、全鉄に対する二価鉄の割合が一時的に減少した。このことから、光量が鉄の酸化過程に影響を及ぼしている可能性が示唆された。2015年から採水した3年間の温泉水の全鉄濃度を測定した結果は、下流に向かって鉄の濃度が7月と8月に相対的に高くなる傾向を示しており、流域での過程が、鉄の存在状態に影響を及ぼし、季節変化を生じさせたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
希土類元素分析では、キレート処理によってより精度のよい希土類元素パターンが得られるようになったが、処理方法を選定するのにやや時間がかかった。また、得られたユウロピウム異常は当初期待していたよりも小さかった。 また、溶存鉄の連続観測では、対象とした温泉施設が、消毒剤として次亜塩素酸ナトリウムを源泉に自動散布していた。この影響で、観測日の最初の2日間のデータが使用できず、日光と鉄の溶存状態の影響は最終日にのみ観測された。10月下旬に再実験を試みたが、再現性のある結果は得られなかった。一因として、この期間に南中高度が低下し、日光の直射量が減少したことが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、中央構造線沿いにさらに温泉調査を行い、リチウムの相対濃度や希土類元素パターンを用いて、温泉水の熱源とその温度を推定する方法を検証する。 また、溶存鉄の連続観測を島根県の小屋原温泉で実施する。小屋原温泉は、含鉄のナトリウム・マグネシウム塩化物炭酸水素塩泉であり、これまで調査してきた奈良県の入之波温泉と似たようなトラバーチンマウンドを形成する。ここでは、申請者が、2011年に調査を実施しており、過酸化水素の日周期変化が観測されることを確かめている。小屋原温泉の結果と入之波温泉の結果を比較し、鉄の酸化過程における光の効果を検証する。
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Causes of Carryover |
初年度に研究集会への出張をキャンセルしたため、次年度使用額が発生した。2年目は、ほぼ申請額どおりに使用したため、初年度の繰越金が最終年度に持ち越された。最終年度は、野外調査を中心として研究を行うため、調査旅費として使用する。また、論文執筆の際の英文校閲費用として使用する。
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