2016 Fiscal Year Research-status Report
正しいK-Ar年代値とは何か?ーアルゴン初期値の質量分別に関する検討
Project/Area Number |
16K17841
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山崎 誠子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 研究員 (90555236)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | K-Ar年代測定 / アルゴン初期値 / 火山岩 / 質量分別 |
Outline of Annual Research Achievements |
いくら誤差が小さく精度のよい年代値であっても,求められる前提条件を満たしていない場合,得られた数値は意味のないものになる.K-AR 年代測定において,数十万年前より若い試料を対象とする際には,アルゴン初期値の質量分別補正が必要であることが明らかにされているが,(1)実際に初期値がどの程度ばらつくのか,(2)質量分別が起こるメカニズム,については明らかにされていない. そこで本研究では,通常年代測定の対象とされない非常に若い試料や噴出後に急冷した試料についてアルゴン同位体組成と岩石学的特徴との関連を明らかにし,変動傾向とメカニズムについて議論する. 平成28年度は,フィレンツェ大L. Francalanci教授とイタリア国立地球物理学火山学研究所のR. Corsaro博士,京都大学の田上高広教授の協力のもと,ストロンボリ火山及びエトナ火山において,噴火後30年未満の非常に若い試料を採取した.エトナ火山では,同じ溶岩流で複数点の試料を採取し,脱ガス過程の違いによる組成の不均質について検討する.また,ストロンボリ火山については,通常年代測定に不適とされる発泡した試料も比較のために採取した.さらに,日本の火山については,草津白根山,浅間山から歴史記録のある溶岩試料,阿蘇火山及び西之島火山においては昨年からの噴火による岩石試料を分取することができた.なお,本研究に関する概念や既報データの再検討結果については,山﨑(2016;フィッション・トラック・ニュースレター)において公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストロンボリ火山及びエトナ火山においては,現地研究者の協力により当初予定以上の効率で試料を採取することができた.11月より1年間研究所内のプログラムにより米国オレゴン州立大学にて在外研究を進めることとなり,当初今年度予定していたアルゴン同位体分析については来年度に実施することになったが,試料の前処理及び岩石学的解析を開始している.オレゴン州立大学では,試料前処理について新たな技術を習得することができ,また,40Ar/39Ar年代測定におけるアルゴン初期値についての議論と比較研究も進めることが可能となり,本研究をさらに発展させられることが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には,オレゴン州立大学において昨年度に採取した試料の前処理を進め,12月以降に帰国後,アルゴン同位体組成の分析を開始する.オレゴン州立大学においては別課題が主であるため,本研究の試料全てを持ち込んでいないが,他課題も順調に進められているため,一時帰国により昨年度採取した全ての試料を送付することも考えている.来年度には,日本の火山について,さらに採取と分析を進め,論文として結果を取りまとめるとともに,国内外の学会にて発表する.
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Causes of Carryover |
当初予定していたイタリアでの試料採取の補助に対して,日本から同行した京都大学の田上教授について謝金を支払う必要がなくなり,また2週間の予定で同行できる他の研究者がいなかったため,謝金として使用しなかった.全額を来年度に繰越して有意義に使用したい.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越額は当初予定にはなかったが本研究の発展に大変有効な,オレゴン州立大学との共同研究のために使用したい.オレゴン州立大学では共同研究においても機器使用料が発生するため,そこに充てる予定である.40Ar/39Ar分析システムにおいて非常に若い試料を測定した例はこれまでないため,非常にインパクトのある共同研究になることが期待される.
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