2016 Fiscal Year Research-status Report
ハロゲンと塩素同位体組成から探るマントル不均質とその起源の解明
Project/Area Number |
16K17842
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
遠山 知亜紀 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球内部物質循環研究分野, ポストドクトラル研究員 (30649273)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地球化学 / マントル物質 / 同位体 / 質量分析 / ハロゲン / 塩素同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ハロゲン比(Br/Cl-I/Cl)はマントル内部の物質循環を調べる指標として注目されている。しかし、中央海嶺玄武岩が示すマントルのハロゲン元素比は間隙水と重複しており、その起源を判別することが難しい。そこで本研究の目的は、マントルと間隙水の区別が可能と考えられる塩素同位体(δ37Cl)を加えたBr/Cl-I/Cl-δ37Cl の多次元プロットを用いて、マントル内部のハロゲン不均質とその起源物質(例えば、間隙水や沈み込んだ堆積物など)を明らかにすることである。研究対象は、マントルの情報を保持していると考えられるキンバーライトとマントル捕獲岩を用いる。本年度は、これまでにハロゲン濃度の分析が終えているキンバーライト試料の塩素同位体分析と新たなマントル捕獲岩の入手を行った。 申請者が前年度までに立ち上げた新たな塩素同位体分析法は、海水などの高塩素量の試料に対しては有効であることが確認されている(Toyama et al., 2015)。しかし、本研究で研究対象とするキンバーライトやマントル捕獲岩は使用できる試料量が限られているため、得られる塩素量が微量になると考えられる。そこで、まず初めに、キンバーライトと似た組成を持つ塩基性岩の標準岩石試料(JB-1, JB-2, JB-3)を用いて試分析を行った。その結果、塩素量が微量な場合±0.4‰(2SD)の誤差が生じることが分かった。これはAgCl沈殿生成時に同位体分別が生じている可能性を示している。そこで、様々な塩素量、沈殿条件でAgCl沈殿を作成し、塩素量が微量な場合でも均質な沈殿が安定して得られる沈殿条件の再検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
標準岩石試料を用いた試分析の結果から、塩素量が微量な場合、沈殿生成時に同位体分別が生じている可能性が明らかになった。これは、本研究だけでなく、沈殿法を用いる全ての塩素同位体分析法において重大な問題であり、これまでに報告されている様々な物質の塩素同位体データの信頼性を脅かすものである。そのため、本研究では慎重に検証を行っている。これにより、本年度に予定していた全てのキンバーライト試料の分析を終えることが出来なかった。一方で、新たなマントル捕獲岩として、ドイツ、イタリア、オーストリア産試料を、沈み込む前のマントルのハロゲン組成を調べるためにオマーンのオフィオライトの検討と入手を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記にも述べたとおり、沈殿生成時の同位体分別は多くの塩素同位体分析法に影響を与える。そのため、可能な限り早くに上記の問題を解決し沈殿条件を確立して、昨年度に分析予定であったキンバーライト試料の塩素同位体分析と今年度予定している新たに選定・入手したマントル捕獲岩のハロゲン濃度、塩素同位体分析を行う。平行して、昨年と同様に他の地域のマントル捕獲岩の検討・入手を行う。また、本研究では考察の際に、マントル物質が溶融反応や脱水―加水反応のどちらの分別プロセスを経験したのかを判断するため、Sr-Nd-Pb同位体データを用いる。そのため、基本的にSr-Nd-Pb同位体データが得られている試料を使用する。しかし、Sr-Nd-Pb同位体データが揃っていないものでも、議論に重要と考えられる試料に関しては入手し、ハロゲン濃度・塩素同位体比・Sr-Nd-Pb同位体の分析を行う。
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Research Products
(5 results)