2016 Fiscal Year Research-status Report
超音速ガスパフによる完全無電極ヘリコンプラズマスラスターの高性能化
Project/Area Number |
16K17843
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
桑原 大介 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60645688)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電気推進機 / ヘリコンプラズマ / ヘリコンプラズマスラスタ / 中性粒子供給 / 中心軸供給 / 推力向上 / 超音速ガスパフ |
Outline of Annual Research Achievements |
電極損耗の無い長寿命推進機として、放電管外周に巻いた非接触電極(アンテナ)から供給される高周波電力によって外部磁場下で生成されるヘリコンプラズマを利用したヘリコンプラズマスラスタが提案されており、このヘリコンプラズマスラスタの更なる性能改善のため新たな燃料供給法を提案し、この実証のための研究を行っている。 ヘリコンプラズマはその高い電離度から中心軸付近で中性粒子が枯渇し、電子密度の上昇が制限される問題が報告されている。これに加え、将来のMW級電気推進機では放電管壁のプラズマによる損傷や、未だホールスラスタやイオンエンジン等と比べて推力、比推力、推力電力比において性能が劣る問題がある。本研究では中心軸に積極的に中性粒子を供給する燃料供給法を開発し、電子密度の向上や放電管壁への熱負荷軽減を通してヘリコンプラズマスラスタの性能向上を狙うものである。 H29年度は集束中性粒子ビームによる中心軸供給を目指した超音速ガスパフ法のためのラバールノズル開発とその評価のための小型ピラニゲージの開発を行い、集束中性粒子ビームの生成を確認した。中性粒子供給の原理実証としてプラズマ中心軸に挿入した石英細管から中性粒子を供給する中心軸直接供給法についても評価を行っている。本方式は高密度プラズマに供給管が曝され損耗するため実際の推進機への応用は難しいと思われるが、より直接的で確実な供給法であるため、ラバールノズルによる間接供給法との比較が可能となる。これによる放電実験を行ったところ40%程度の推力の向上が認められ、中心軸への中性粒子供給の有意性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
数Pa以下の高真空下において、ラバールノズルを用いた超音速ガスパフによる集束ビームを使用する分野として磁場閉じ込め核融合プラズマへの水素ガス供給がある。しかしながらヘリコンプラズマスラスタにおける燃料供給量は数十~数百sccmと異なるため、この条件下で集束ガスビームを得るためのスロート径、供給ガス圧等の条件を調査する必要がある。スロート径0.4 mmとしたノズルでは集束ガス流が得られる圧力下においては数千sccmと過剰供給となったためスロート径0.1 mmのノズルを製作し、適切な供給量と集束ガスが得られることを確認した。 一方、集束ガス流の評価には空間分解能と時間分解能の高く、0.1~10 Pa程度の真空度を計測可能な小型真空計が必要となり、このために小型ピラニゲージを開発して使用した。ガス流を阻害しないよう流れ方向と平行な薄型プリント基板を支持台とし、フィラメントに20 μm径、長さ10 mmの白金線を用い、0.1~10 Paの計測範囲において動作を確認した。 石英細管による直接ガス供給では、放電管上流から軸方向に駆動可能な外形6 mm, 内径3 mmの石英管を挿入し、高周波アンテナ前後にガス供給開口を配置して放電実験を行った。推力の評価にはターゲット型の推力スタンドを用い、ガス供給開口が高周波アンテナより下流に置かれた放電で推力が最大40 %向上することを確かめた。本方式では最も電子密度が高い中心軸に石英管が設置されており、衝突損失が発生していると考えられるため、石英管を使用しない超音速ガスパフ等の適用を考えれば実際の向上率は更に高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
超音速ガスパフ法については、今年度得られた知見を元にプラズマ実験用ノズルを製作し、実際に放電実験を行う。スラストスタンドを使用した推力評価の他、中心軸供給に拠るプラズマパラメータの評価も併せて行うことを計画している。使用する計測器としては静電プローブやマッハプローブによる電子密度とその空間分布、軸・径方向のイオン流速の評価や非接触計測としてマイクロ波干渉計による電子密度分布計測、レーザー誘起蛍光法による高空間分解能な中性粒子・イオンの流速計測も計画している。 並行して、直接供給法である石英細管ガス供給についても調査を行う。これまではプラズマ軸中心と平行に放電管上流から管を挿入する損失の大きい方法であったが、放電管軸方向と垂直に設置された枝管部から、プラズマ軸と垂直にガス管を挿入し、プラズマ軸・径方向における中性粒子供給を行い、推力・プラズマ特性を調査する。本方式は石英細管へのプラズマ衝突による損傷やプラズマ損失の問題があるが、数百ワット程度の推進機においては極めて簡便な推力向上法として実用化の可能性も考えられるため、引き続き研究を続ける。
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Research Products
(2 results)