2019 Fiscal Year Research-status Report
多階層シミュレーションモデルの開発とプラズマ階層横断現象の探求
Project/Area Number |
16K17847
|
Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
宇佐見 俊介 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (80413996)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 磁気リコネクション / 多階層モデル / 粒子モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマにおける多階層横断現象を理解するため、様々な多階層シミュレーションモデルの開発・改良、および、それらのモデルを支える第一原理的なシミュレーションによる物理探究を行っている。開発している多階層モデルは、パラメータ組み込み型と領域分割型の大きく2種類に分けられる。 パラメータ組み込み型の多階層モデルの適用対象の1つとして、磁気リコネクションに焦点を当てている。磁気リコネクションにおいては、ドリフトキンク不安定性による波・粒子相互作用が「異常抵抗」と呼ばれる電気抵抗を生み出し、それが磁力線をつなぎ替えるトリガーとなっていることが分かっている。2019年度には、ドリフトキンク不安定の粒子シミュレーションを、様々な条件を変えて行うことで異常抵抗をモデル化した。さらに、そのモデリング式を大規模なMHDモデルに組み込み、磁気リコネクションのパラメータ組み込み型多階層シミュレーションを実施することに成功した。 一方、磁気リコネクションのための領域分割型の多階層モデル開発を目指すため、リコネクション下流における物理探究を進めている。その結果、イオンの速度分布として、これまでの円環状構造に加えて、多様な非Maxwell構造を見出した。一方で、これら速度分布を形成するイオン運動は、円環状速度分布のイオン運動と同じ枠組み内で説明できた。すなわち、異常速度分布が一般的であり、これまでの円環状分布は、その特殊形の1つと位置づけることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
磁気リコネクション下流における物理の探査については、計画以上に進捗している。下流で見出した、MHD条件を破ることにつながる非Maxwell速度分布構造は、マクロから見ると実効的加熱としての側面がある。そのため、球状トカマクにおける磁気リコネクションを通して起こるイオン加熱に適用し、実験で捉えられている加熱の特徴を説明することに成功した。また、さらに温度を高くする状況などの発見などにおいて、大きな成果を挙げている。この面については、計画以上に進展していると言える。 その反面、この領域を直接階層連結することによる領域分割型多階層モデルでは、連結のため考慮する必要がある物理要素が、予想以上に複雑かつダイナミックであるという側面となる。また、連結の技術的な困難も想定以上に見出されている。 一方、パラメータ繰り込み型多階層モデル開発面においては、その適用物理現象を磁気リコネクションと圧力駆動型不安定性と想定している。磁気リコネクションに関しては、電気抵抗をモデル化することにある程度の成果を得ているが、圧力駆動型不安定性の運動論効果モデリングについては、研究所スパコンの更新が計画から遅れたことがあり、予定していたパラメータランが完了せず、モデリングにまで至っていない。 まとめると、全体としての進捗状況は「遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで開発・改良してきた領域分割型多階層モデル、およびそれを支える第一原理モデルとも言える粒子モデルを用いて、磁気リコネクション下流における物理の探究を継続し、その成果はパラメータ組み込み型多階層モデルの発展に活かす。特に、球状トカマク装置における磁気リコネクションを通してのイオン加熱への応用に力を入れ、実際の実験に近い状況のシミュレーション行って、実験の説明・実験への提案をしていく。 磁気リコネクションのパラメータ組み込み型多階層モデル開発面については、情報通信研究機構の田教授らの協力を得て、ドリフトキンク不安定性による異常抵抗モデルを地球磁気圏全体を模擬したMHDシミュレーションに組み入れる。一方で、磁気リコネクションには、非ジャイロ運動による上記とは別の機構が生み出す電気抵抗も見られる。こちらの電気抵抗のモデル化にも取り組む。さらに、特異的な速度分布構造形成を、磁場エネルギーから熱エネルギーへの変換というマクロな視点でとらえることで、何らかのモデル化を行う。この3つのモデル化した式それぞれを、整合性をとってMHDシミュレーションに取り込み、大規模なリコネクション系の物理を調べる。 一方、圧力駆動型不安定性については、計画から遅れている、粒子シミュレーションのパラメータランを完了させ、運動論効果のモデリング、およびそのMHDモデルへの組み込みを完成させる予定である。
|
Causes of Carryover |
HDDを、予想したほどの個数購入しなかったためと、出席を予定していた国際ワークショップが中止となったためである。 スパコン更新の遅れもあって研究計画を練り直し、解析に必要なハードウェア、ソフトウェア購入のための物品費、国内学会年会、研究会出席などへの旅費に、繰り越した予算を使用する。
|