2018 Fiscal Year Research-status Report
非晶質試料の構造解析のための固体NMRによる炭素間距離決定法の開発
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16K17850
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大橋 竜太郎 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50533577)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原子間距離 / 固体 / 微結晶粉末 / 分子構造 / 解析精度向上 / 核磁気共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.概要 固体NMRは、試料の単結晶化、または微結晶粉末化を必要としない解析法であり、特に結晶化が難しいオリゴペプチドなどの解析のための手法が期待されている。固体NMRでは、炭素原子間の偏極移動を利用した炭素原子間距離を用いて構造解析を行うことが多い。しかし、偏極移動を用いた手法は、NMRスペクトル上で全く同じ化学シフトを示す炭素間では距離を得ることが出来ない、という問題点があった。本研究では化学シフトが同じでも炭素間距離を得られる可能性のある、炭素間の双極子相互作用による粉末線形の線形解析を用いた解析法の開発を行った。より具体的には「炭素間の双極子相互作用による粉末線形」を測定するための手法の検証を行った。 2.実験 500MHz固体汎用NMRシステム、500MHz固体高分解能NMRシステムを用いて、直接観測側は13C 高分解スペクトル、関節観測側は13C-13C間の双極子相互作用による粉末線形スペクトルとなる2次元スペクトル(高分解能-粉末線形の2次元スペクトル)測定を行った。 3.結果と考察 Double quantum Homonuclear Rotary Resonance (HORROR)法およびBroadband Back-to-Back (BBB)法の高分解能-粉末線形の2次元スペクトルを測定した所、図1のような結果が得られた。図1のようにHORROR法では広幅な粉末線形を示すが、信号強度の小さい信号が得られた。図2のようにBBB法では粉末線形の幅はHORROR法より狭いが、信号強度の大きい信号が得られた。複雑かつ分子量の大きい分子の構造解析を行う場合、HORROR法の信号強度では観測が出来なくなる可能性があるため、BBB法の方がより汎用性の高い方法だと考えられる。 4.得られた成果 上述のように2つの手法について、炭素間距離の解析に対する有用性について検証出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は「まず、多スピン系試料で精度が低下する原因について考察した。その結果、その原因を回避するためには炭素1つだけを炭素13標識すれば良い事が分かり、実際に L-Valine を用いた解析で高精度な炭素間距離を求めることが出来た。」ところまで進捗した。2018年度は、2017年度とは炭素間距離を求めるための別の方法[Double quantum Homonuclear Rotary Resonance (HORROR)法およびBroadband Back-to-Back (BBB)法]について検討を行い、それぞれの手法の長所、短所について検証した。また、解析する試料の分子を大きくするためにペプチド受託合成を行い、3残基のペプチドを作成した。今後はこの3残基の試料を用いてさらに解析手法の検証を進める。試料作成と手法の検討まで概ね終了したため、「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に作成した3残基のペプチドの微結晶粉末試料を用いて炭素間距離の解析を行い、結晶構造との比較から本研究で開発した手法がどの程度の精度で、どのぐらいの距離まで解析できるかを検証する。 0.5 nm以上の距離を10%程度の誤差で測定することが出来れば、固体NMRを用いた解析としては、かなり長距離、かつ精度の高い方法が開発できたと言える。また、そこまでの高い精度でなくとも、どの程度の精度で距離が得られるかが分かれば、その精度でも十分に構造解析が出来る試料に関しては適用可能となる。 また、時間が許せば試料を凍結乾燥により非晶質に変えたうえで解析が可能であるかを検証したい。非晶質の解析が可能となればかなり研究が進むことになる。ただし、まずは微結晶粉末試料で解析法の検証を優先して行う。
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Research Products
(2 results)