2016 Fiscal Year Research-status Report
原子核の量子揺らぎを含めた化学反応解析のための多成分系分子理論の確立と応用
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16K17851
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
宇田川 太郎 岐阜大学, 工学部, 助教 (70509356)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子多成分系分子理論 / 原子核の量子揺らぎ / 反応経路 / H/D同位体効果 / プロトン移動反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではプロトンのような軽い原子核自身の量子揺らぎを直接取り込んだ多成分系計算手法を発展させ、1. 原子核の量子揺らぎを含めた理論計算手法による化学反応解析手法の確立、および2. 原子核の量子揺らぎを含めた巨大系を効率よく計算するための手法の確立を目指す。研究遂行のために必要な課題は、(1A)効率的な計算手法の確立、(1B)基底状態プロトン移動反応に対するH/D同位体効果の解析、(2A)巨大系のための理論計算手法の開発、(2B)包接水和物に対するH/D同位体効果の解析、の4点である。 申請時の計画通り、H28年度は研究項目(1A), (1B), (2A)を実施した。項目(1A)は速やかに終えることができ、ストリング法およびBFGS法の導入に成功した。研究課題(1A)を当初の計画より早く終えることができたため、(1B)に予定していた以外の応用計算にも着手した。具体的には、フッ素ラジカルによる水分子からの水素引き抜き反応及びピルビン酸の異性化反応に対して、(1A)で確立した計算手法を用いて水素原子核の量子揺らぎを含めた化学反応解析に成功した。(1B)については、当初予定していたアルコール2分子を介したプロトン移動反応については計画通り終えることができたが、3分子目のアルコール分子の効果を取り入れる必要が示唆されたため、追加検討を行っている最中である。(2A)についても、H28年度に予定していた、プログラムのベースとなる部分の開発は終えることができ、H29年度前半で完成できる見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は、研究項目(1A)効率的な計算手法の確立、(1B)基底状態プロトン移動反応に対するH/D同位体効果の解析、(2A)巨大系のための理論計算手法の開発、を実施した。 (1A)については当初の計画よりも早く終えることができたため、開発した手法を用いて、当初研究計画になかった2つの応用計算(フッ素ラジカルによる水分子からの水素引き抜き反応及びピルビン酸の異性化反応)を実施し、原子核の量子揺らぎを含めた化学反応解析に成功した。これらの応用計算は当初研究計画に含まれていないものの、すでに論文としてそれぞれ受理・掲載されており、当初計画以上の成果をあげることに成功している。 (1B)については、当初の計画していたアルコール2分子が関与する基底状態プロトン移動反応に対するH/D同位体効果の解析には成功したものの、3分子目のアルコール分子の効果を考慮する必要が示唆されたため、追加検討が必要となった。 (2A)についても、H28年度後半で当初計画通りにプログラムのベースとなる部分の開発を終えることができた。以上より、H28年度中に実施予定であった3項目については、(1A)では当初の研究計画になかった2つの応用計算も実施し、それらが既に論文として受理・掲載されていること、(1B)については追加検討が必要となったものの、当初予定分は計画通り実施できたこと、(2A)では当初の計画通りプログラムのベース部分の作成を終えたことから、全体としては概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は、申請時の計画通り、H28年度からの継続課題である(2A)巨大系のための理論計算手法の開発を実施するとともに、 (2B) 包接水和物に対するH/D同位体効果の解析を実施する。これらにより、原子核の量子揺らぎを含めた、多数の分子を含んだ大規模な系を計算するための新しい計算手法の確立を目指す。また、H28年度に実施した(1B)基底状態プロトン移動反応に対するH/D同位体効果の解析において追加計算が必要となったため、項目(1B)についても継続して研究を実施する。研究項目(1B)と、(2A)および(2B)は並行して実施可能な研究項目であるため、(1B)の追加計算を行いつつ、並行してH29年度研究項目(2A)および(2B)を実施する。
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Research Products
(7 results)