2016 Fiscal Year Research-status Report
温度・圧力等の反応条件を取り込んだ理論化学による不均一触媒反応の機構解明
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16K17860
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 敦之 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (80613893)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 触媒反応 / 理論計算 / 反応速度論 / 自動車排ガス / ロジウム / 還元 / 第一原理計算 / 表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、不均一系触媒による反応の機構を原子・分子レベルから理解するため、第一原理計算およびそのエネルギー論に基づいて反応速度論的解析を行い、触媒活性の期限の解明に迫った。本研究で特に強調すべき点は、反応温度や圧力によって触媒の状態や反応メカニズムの切り替わりが起こるような系を対象とする点である。このような反応は、律速段階が反応条件により変化するために単一の律速段階を仮定しない、高度な反応速度論解析を必要とする。このような振る舞いを示す具体的な対象として、本年度では自動車排ガスの浄化において重要となるロジウムによるNO+CO反応を考察した。計算手法は平面波基底による密度汎関数理論を用いた。速度論的解析は特定の律速段階を仮定せず行なったため、広い温度範囲での反応メカニズムを正確に理解することが可能となる。 これら第一原理計算と反応速度論を組み合わせて検討を行なった結果、ロジウム(111)面におけるNO+CO反応においては低温ではN2Oが生成されるが、高温ではN2が生成される結果となり、実験的な傾向を再現することができた。さらに、ロジウム(100)面に対する検討やロジウムクラスターに対する検討も行なったが、(111)面がもっとも高い反応性を示す結果となり実験結果と一致した。また、NO被覆率に露わに依存したエネルギー論の検討も行なった結果、上記の結論を補填する結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、当初検討対象として予定していたロジウム(111)面だけでなくロジウム(100)面やロジウムクラスターなどについてもその触媒活性の解析・予測を行うことができた。これは、(111)面での経験を蓄積できたために計算レベルの検討や遷移状態構造の探索などにおいて効率化を吐かれたがことが原因と考える。また、清浄表面だけでなく高いNO被覆率におけるエネルギー論の検討も行うことができ、より現実の触媒反応に近いモデルを用いる研究も進行することができた。これらの結果は当初の研究計画にはなかったものであり必要に応じて派生した課題であるが、多くの研究者から興味をもたれる結果となった。加えて、温度に依存した反応メカニズムを解析する上で必須となる高度な反応速度論解析において、基礎的な理論・プログラムの完成を初年度に達成することができたことは、当初の計画以上の進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度では、本年度において達成された反応速度論解析手法を応用してより現実的なモデルを採用し、自動車排ガス触媒の反応メカニズムに迫る。具体的には、表面金属が酸化される効果をエネルギー計算および速度論解析に取り込むことで、酸素分圧の変化に対する触媒活性の変化を理解・予測することが可能と考える。また、本年度ではロジウムのみを対象としたが同様の計算は他の金属系でも可能であるため、他の金属種および合金などにおける触媒活性の検討を行い、ロジウムとの性能の比較を行うことで最終的には貴金属代替にとってどのような触媒を用いれば良いかの指針を提案する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は200円未満と非常に小さく、ほぼ予定位通りの予算執行を行なったものと言える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度身使用額は非常に少額のため、次年度においても計画通りの執行を行う予定である。
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Research Products
(5 results)