2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17869
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
川本 拓治 山口大学, 創成科学研究科, 助教 (70756139)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トリフルオロメチル化 / ラジカル / トリエチルボラン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,新規トリフルオロメチルラジカル源の開発を目的としている。トリフルオロメチル基を有する化合物は医薬品,農薬および機能性材料など広範囲に用いられている。今後さらなる展開が見込めるため,新規トリフルオロメチル基の導入手法の開発は重要な研究課題である。これまで数多くのトリフルオロメチル化試薬が開発されてきたが,これらを用いる限りは大幅な発展は見込めない。本研究では,ビニルトリフラートの新たなトリフルオロメチルラジカル源としての可能性を検討した。まず,ビニルトリフラートをトリフルオロメチルラジカル源およびラジカルアクセプターとしたα―トリフルオロメチルケトンへの変換反応を検討した。ビニルトリフラートに対してアゾラジカル開始剤であるAIBNを作用させると,低収率ながら期待した化合物が得られることを見いだした。ラジカル開始剤としてトリエチルボランを用いることで,α―トリフルオロメチルケトンの収率が大幅に向上した。適切な塩基を選択することで,ビニルトリフラートを単離することなくOne-potでケトンからのトリフラート化に続く形式的なトリフルオロメチル基の転位を達成した。本手法は単離が困難なビニルトリフラートに対して非常に有用である。また,ビニルトリフラートの代わりにビニルペルフルオロアルカンスルホナートを用いても同様の反応が進行し,α―ペルフルオロアルキルケトンを効率よく得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように,ビニルトリフラートを新規トリフルオロメチルラジカル源としての利用法を開発することができた。また,ビニルペルフルオロアルカンスルホナートを用いることで,ペルフルオロラジカル源としても作用することを見いだした。また,適切な塩基を選択することでケトンからワンポットでトリフルオロメチルケトンへの変換を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の検討によりトリフルオロメタンスルホン酸無水物をビニルトリフラートへと変換することで,効率よくトリフルオロメチルラジカルが生成しさらにビニルトリフラート自身がトリフルオロメチルラジカルの捕捉剤として働くことがわかった。今後はトリフルオロメタンスルホン酸無水物を直接トリフルオロメチルラジカル源として用いる手法を検討する。トリフルオロメタンスルホン酸無水物は高い反応性を有しているため意図しない反応が生起する場合がある。その場合は,トリフルオロメタンスルホン酸無水物を一時的に変換し,トリフルオロメチルラジカル源として用いる手法も検討する。
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Causes of Carryover |
少ない実験量で成果に結びついたため,試薬やガラス器具などの消耗品費が削減できた。申請の段階ではガスクロマトグラフの備品を購入する予定であったが,内定時において減額されたので減圧蒸留用圧力調整器の購入に予定変更した。しかし,比較的安価なコックを購入DIYすることで代用でき備品費が減額できた。そのため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては,試薬・ガラス器具などの消耗品,研究図書の購入,学会への参加のための旅費,論文投稿における英文校閲費などに充てる。
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