2016 Fiscal Year Research-status Report
高周期14族元素を含む3次元拡張π電子系化合物の創成
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16K17870
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
稲垣 佑亮 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (20725626)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | π電子系化合物 / ケイ素 / π*-σ*共役 / ルイス酸性 / シロキサン結合 / 芳香族性 / ヘテロ五員環 / クロロシラン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究でターゲットとする化合物は、孤立電子対、Si-E σ*軌道、それぞれのπユニットがねじれを伴って結合したσ結合、などを介してπ共役が3次元的に広がった化合物である。最終目的物における、Si-E σ*軌道のルイス酸性度について明らかにすることを目的としている。設計した分子は、最終段階に至るまでに、各パーツに分けることができる。本年度は各パーツの合成経路の確立や反応条件の検討によって反応を最適化することを目的とした実験を行った。また、合成の最終段階に困難な反応が含まれるため、本テーマの範疇に入るより合成経路の短い比較化合物の設計と合成検討を行った。 [1] 臭素置換ヘテロ五員環化合物のリチオ化と続くクロロシランの導入について ヘテロ五員環化合物へのシリル基の段階的な導入がどれくらい制御できるかについて検討を行った。実際には、リチオ化後にアニオン転位が起きている可能性があり複雑な混合物を与える。更なる条件検討や合成上の工夫が必要である。 [2] π共役系ユニットがシロキサン結合によって連結拡張された化合物の設計と理論計算について π共役系ユニットにシリル基を導入し、シロキサン結合によって連結拡張する反応とそれに続くπ共役系の官能基変換を検討した。生成物には構造的に異性体が存在するので、その相対エネルギーに関する知見を得るため、理論計算を行った。反応は複雑な混合物を与えるが、シリカゲルカラム後にGPCによって更に精製を行った。生成物は、複雑なNMRスペクトルを与えるが、温度可変測定や各種NMR測定などから判断して想定した化合物が生成していると判断した。続く官能基変換の検討はまだ十分に行えていない為、最終目的物を得るために更なる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画の合成経路にはいくつか困難な反応が含まれており、計画した以外にも何通りかの合成経路を考えることができる。合成経路の中には、検討の結果、既に反応が進行しない段階も明らかになっており、新たな合成経路を計画検討している。最終目的物の合成までは達成できていないものの、合成に関する知見を蓄積している。また、本研究の範疇に入る比較化合物については最終目的物の前駆体の段階まできている。これらを総合的に判断して、本研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] 本研究の範疇に入る比較化合物について、最終段階の官能基変換について検討する。 [2] ヘテロ五員環は、シランのハロゲン化の段階において耐性が低いので、芳香族環に変更した類縁化合物について合成検討を行う。または、ヘテロ五員環に嵩高い立体保護基を導入した後に同様の反応を検討する。 [3] 当初設計した化合物の最も困難な段階についての反応条件を最適化するために、よりアクセスしやすい化合物に関して反応条件の検討を行う。また、新たな反応経路についても検討する。 [4] 現在のところ合成に成功している部分構造を基に、そこから派生して合成できる化合物について合成を行う。
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Causes of Carryover |
初年度は研究環境の整備を考えて多めに配分するように計画したが、次年度以降に必要となるガラス器具等の消耗品、試薬の購入、などに備えて初年度の使用額を抑えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ガラス器具等の消耗品、化合物合成の試薬、学会発表のための出張費に使用する。
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[Journal Article] Molecular Gyrotops with a Five-Membered Heteroaromatic Ring: Synthesis, Temperature-Dependent Orientation of Dipolar Rotors inside the Crystal, and its Birefringence Change2016
Author(s)
T. Masuda, J. Arase, Y. Inagaki, M. Kawahata, K. Yamaguchi, T. Ohhara, A. Nakao, H. Momma, E. Kwon, W. Setaka
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Journal Title
Cryst. Growth Des.
Volume: 16
Pages: 4392-4401
DOI
Peer Reviewed
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