2017 Fiscal Year Research-status Report
アントラセン骨格を組み込んだ含窒素大環状化合物の合成と酸化還元挙動の解明
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16K17874
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
岩永 哲夫 岡山理科大学, 理学部, 講師 (40454805)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アントラセン / 含窒素大環状化合物 / クロスカップリング / パイ共役系 / 酸化還元挙動 / 電子スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
アントラセン骨格を組み込んだ含窒素大環状分子として,今年度は2,3-置換および2,7-置換アントリレンユニットを導入した化合物を中心に研究を進めた. 2,3-ジブロモアントラセンとp-アニシジンによるカップリング反応を用いて,パイ拡張型phenazine誘導体の合成に成功した.カップリング部位が立体的に混み合っていることから,現在反応条件を検討し,収率向上を目指している.パイ拡張型phenazine誘導体について良好な結晶が得られたのでX線結晶構造解析を行ったところ,分子構造は平面性が高く,パッキングは窒素を挟んだアントラセン部位同士が分子間でπ-πスタックしている構造をとることがわかった.合成中間体である2,3-ジアミノアントラセン誘導体を用いて,ドナー/アクセプター型含窒素芳香族化合物の合成も試みた.合成した誘導体を用いて種々の分光学的測定を行った.吸収帯の帰属を行うために,DFT計算の結果を用いて検討した. 一方,2,7-アントリレンを組み込んだ含窒素大環状化合物の合成も検討した.はじめに2,7-ジアミノアントラセンとジブロモベンゼンとのカップリングを試みたところ,ポリマーのような混合物が得られるのみであった.そこで2,7-ジブロモアントラセンとパラフェニレンジアミンユニットとのカップリング反応を行ったところ,目的とする大環状化合物の合成に成功した.酸化還元電位を調べるためにサイクリックボルタンメトリーを測定し,可逆な3段階の4電子酸化波が観測され,酸化種が安定に存在できることが示唆された.酸化条件での電解吸収スペクトルも測定し,近赤外領域に幅広い吸収帯が観測された.これはTD-DFT計算の結果より電荷共鳴と電荷移動吸収に帰属できると示唆された.現在,置換位置による酸化種の安定性や電子状態への影響を調査しているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2,7-置換カルバゾールと9,10-ジアミノアントラセンおよび9,10-ジアミノアントラセンとパラフェニレンジアミンを交互に組み込んだ含窒素大環状分子の構造および酸化状態の分光学データ解析をDFT計算の結果から考察し,特に酸化状態の物性で非常に興味深い結果が得られた.これらの研究成果を取りまとめた論文を学術誌に発表することができた. また2,3-ジアミノアントラセン骨格を有する大環状分子について,副次的な化合物も合成できており,それらの物性評価に着手している.いくつかの含窒素大環状分子についても分光学および構造解析が進んでおり,成果をまとめる段階まできている.以上のことにより,本研究課題の2年目の進捗状況は概ね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
2,3-アントリレンユニットを持つ化合物では,引き続きアクセプター性芳香族ユニットを組み込むことでドナー/アクセプター型の新規大環状化合物の合成に取り組み,その電子特性を電子スペクトルやサイクリックボルタモグラムにより明らかにする.またそれらの酸化状態における電子スペクトル測定や結晶構造解析も試みる. 原料であるジハロアントラキノンを活用した誘導体の合成も進め,それらを組み込んだ大環状分子の合成にも着手する.アミノ基を導入する際にキノン部位と反応することが予想されるので,反応条件の検討や適切な位置への置換基導入など安定化を図り,種々の物性測定を行うことができるように工夫する.
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Research Products
(14 results)