2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17876
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹田 浩之 東京工業大学, 理学院, 特任助教 (70647065)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Cu(I)錯体 / 鈴木・宮浦カップリング / 光物性 / 酸化還元特性 / 光増感反応 / CO2還元光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2,9-dimethyl-1,10-phenanthroline (dmpと略)型配位子と、リン配位子を2つ有する四面体型Cu(I)錯体の合成を主に行なった。特に、4,7-dichloro-2,9-dimethyl-1,10-phenanthrolineを原料とし、鈴木・宮浦カップリングにより、4,7-位に種々の電子的特性を有した置換フェニル基(R-Phと略)を導入した新たな配位子を合成した。これをdmp配位子の代わりに用いてCu(I)錯体を合成することにより、Cu(I)錯体の可視光吸収特性の増加を試みた。 この結果、R-Phとして電子求引性の4-trifluoromethyl-phenyl (CF3-Ph)基を用いた場合に、得られたCu(I)錯体の光吸収波長の長波長シフトが観測され、MLCT (metal-to-ligand charge transfer: Cu -> dmp)吸収極大波長は、約10 nmのレッドシフトを示した。さらに、R-Phとしてビフェニル (BPh)基を用いると、光吸収効率の増大、すなわちMLCT吸収帯のモル吸光係数が約2倍に増加した。いずれのCu(I)錯体も、室温アセトニトリル中において強い発光を示し、マイクロ秒程度の励起寿命を有することが確認された。 得られたこれらのCu(I)錯体の酸化還元特性をサイクリックボルタンメトリーにより調べた結果、一電子目の還元に相当する酸化還元波は良い可逆性を示した。さらにこの電位は、電子求引性置換基導入に由来するポジティブシフトが見られたものの、一般的な光増感剤であるRu(II)トリス(2,2'-ビピリジン)錯体に比べ、ネガティブ側に存在していた。すなわち、すなわち、これらCu(I)錯体の一電子還元種は安定で、かつ十分な還元力を有していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、極性溶媒中でも安定に動作する可視光駆動型Cu(I)フェナントロリン(Cu(I)phen)錯体レドックス光増感反応を確立することにある。 第一目標となる可視光域の光吸収能向上に関しては、上述の通り吸収波長の長波長化と、モル吸光係数の増加をすでに達成している。今後は、さらなる可視光域での光吸収能の増大を目指し、新たなphen配位子を設計・合成する予定である。 第二目標の、Cu(I)錯体の安定化は、上述の通り、光物性・酸化還元特性の評価から、それぞれお励起状態、および一電子還元状態におけるCu(I)錯体の安定性が達成された。また、この一電子還元状態のより詳細な安定性評価と、その反応性評価のため、分光電気化学測定の装置を新たに設置した。これにより今後、Cu(I)錯体一電子還元種の特性についての調査を行なって行く予定である。 以上のように、今年度の目標は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本研究の第三目標となるレアメタルフリーなCO2還元光触媒反応系の構築を主に行なう。光増感剤として今回合成したCu(I)錯体を用い、特に希薄条件、もしくは長波長光照射条件において光触媒反応が高効率に進行するかを調べる。今回合成したCu(I)錯体一電子還元種が十分な還元力を有していることがわかったので、光触媒反応には既存のCO2還元触媒、特にレアメタルフリーなFe錯体、もしくはMn錯体を用いる。 これと同時に、Cu(I)錯体一電子還元種生成過程についての物理化学的評価や、新たに作成した分光電気化学測定装置を用いたCu(I)錯体一電子還元種の安定性・反応性について評価を行うことによりCu(I)phen錯体レドックス光増感反応の確立を行なって行く。
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Causes of Carryover |
計上した消耗品、特にガラス器具、及び試薬類購入による支出が予想に比べ少なく済んだためである。予定した設備備品は、予定通り購入した。旅費等についても予定通り使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越した予算は、消耗品(試薬、ガラス器具)の拡充に用いる予定である。
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