2017 Fiscal Year Research-status Report
多官能性鉄錯体触媒によるアルコールの脱水素型酸化反応の構築
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16K17880
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
神谷 昌宏 北里大学, 理学部, 助教 (40758447)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鉄錯体 / アルコール酸化 / 水素発生 / 触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は標的の錯体に関する合成とその反応性の解明に主眼を置いて研究を進め、目的とする錯体分子の合成ならびに最重要課題であった基質制限の克服を達成した。一方、従来の鉄錯体触媒(TON67000、TOF3500/h)と比較すると大幅な触媒効率の低下が見られた。本年度は触媒効率の向上を目指し、計算化学、実験的手法により配位子の選択による触媒効率への影響を調査した。種々の立体および電子的効果の異なる官能基を有する配位子を用い、1-フェニルアルコールの脱水素型酸化反応に対する触媒活性を評価した。その結果、立体的にかさ高い官能基を導入した際にわずかながらTONの向上が見られた。また、電子求引性基を多数導入した配位子を用いた際には脱水素反応とともに脱水反応が進行し、対応するエーテルを与えた。これは電子求引性基の導入により配位子であるベンジルアルコール誘導体の酸性度が向上し、強酸触媒として働くことで脱水反応が促進されたものと考えられる。一方、配位子上の官能基部位であるヒドロキシル基のジェミナル位に水素持たない類似の配位子(ピリドン、8-キノリノールなど)を用いた場合には全く反応の進行が見られなかった。種々の実験結果から、アルコキシ錯体の水素移動を経る脱水素機構を推定した。得られた実験結果をもとに、Gaussianプログラムを用いた反応機構探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では初年度に新規多官能性鉄錯体の合成およびその反応性の解明を行い、従来の触媒で問題となっていた基質制限の克服を計画していた。次年度では、計算化学や量論反応などの実験結果をもとにした反応機構解析を行うとともに、触媒の効率向上を予定していた。初年度、次年度ともに計画通りの成果が得られており、おおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
多官能性錯体中の水素授受能に関する知見を実験的手法により明らかにするため、各種酸によるプロトン化などによって生じる化学種を同定し、多官能性錯体中のプロトン授受にかかわる官能基部位を特定するとともに、触媒活性向上の足掛かりとする。計算化学による反応機構解明もあわせて行う。
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Research Products
(16 results)