2016 Fiscal Year Research-status Report
CO2資源化のための還元触媒を超低過電圧で駆動させる高性能アゾリウム助触媒の開発
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16K17883
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
松原 康郎 神奈川大学, 工学部, 助教 (90616666)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / 資源化反応 / 分子触媒 / 電気化学 / 標準電極電位 / アゾリウム / 金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギーを電力源とする二酸化炭素(CO2)の資源化反応(還元反応)――例えばCO2 を電気化学的に一酸化炭素(CO)や等価体であるギ酸(HCOOH)などのC1化合物に還元するなどの電気化学反応――は、非石油依存社会の構築と地球温暖化の回避策の一つとして有望視されている。これは生成物が、工業化学での基幹反応であるFischer-Tropsch反応の原材料になるからである。しかし、これまでの多大な努力にも関わらず駆動に必要な過電圧(駆動電圧と標準電極電位との差であり反応のエネルギー効率に直結する)は依然として高く、そのため超低過電圧駆動の触媒の開発が国内外で精力的に行われている。また、過電圧を評価するための基準となる標準電極電位が整備されていないことも課題となっている。正確な標準電極電位は今後のCO2資源化反応の研究基盤、特に超低過電圧領域における触媒開発に不可欠な指標となるからである。 これに対し研究代表者らは、イオン液体の構成分子であるアゾリウムが既存のCO2還元錯体触媒に対して有用な添加剤(助触媒)として働くことを発見し、そのCO2活性化手法としての有用性を検討してきた。2016年度は、アゾリウム助触媒の高性能化を狙い、立体化学的に柔軟なBronsted酸点をアゾリウム骨格上に導入し、その効果を検討した。アゾリウムを分子内に有するような錯体触媒の合成にも成功し、この場合、アゾリウムを添加剤として用いなくとも一定の助触媒効果が現れることが判った。また、標準電極電位の整備についても、対象溶液の絶対的な酸性度を測定するという要の手法を確立し、手始めに水-アセトニトリル混合溶媒中でのCO2からCOへと電気化学的に還元する反応について一連の標準電極電位を決定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、CO2資源化のための還元触媒の活性を向上(過電圧を低下)させるアゾリウム助触媒の開発と、任意のCO2還元触媒の性能を統一的に評価する基盤となる標準電極電位の整備を行うことを計画している。触媒の過電圧は標準電極電位に対して評価され、その過電圧を、CO2-触媒-アゾリウム間の云わば3体間相互作用によって低下させることを狙っており、前者の「助触媒の開発」と後者の「標準電極電位の整備」は密接に関わっている。 初年度(2016年度)は、後者の「標準電極電位の整備」において計画以上の進展を収めることができた。これは、当初予定していたアセトニトリル-水混合溶媒中でのCO2のみかけの酸性度の測定をすることができただけでなく、これらの酸性度を水中での値と直接比較できるような(絶対的な)尺度で測定できるような手法を開発できたためである。これにより、標準電極電位を決定するための理論的な枠組みを構築することができ、1例としてアセトニトリル-水混合溶媒中での一連の電位を決定することができた。現在、これらの結果を記述した論文が審査中である。しかしながら、前者の「助触媒の開発」においては、アゾリウム骨格上へのBronsted酸点の導入や、錯体触媒の配位子へのアゾリウムの取り込みが触媒作用を促進する効果があることを見出した一方、これら新たに発見した促進効果について詳細な検討ができていないことから、概して全体を評価すると進捗状況としては「おおむね順調」であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、前年度に引き続き、アゾリウム助触媒の開発とCO2還元反応の標準電極電位の整備に取り組む。前者に関しては、前年度に見出した触媒作用に対する2つの改良方法、すなわち「アゾリウム骨格上へのBronsted酸点の導入」と「錯体触媒の配位子へのアゾリウムの取り込み」について、化合物の合成方法の改善を検討しつつ、これらの改良方法によってもたらされる触媒作用の促進効果の程度を定量的に評価するところより始める。また、アゾリウムとCO2の相互作用についてもアゾリウムのπ電子系を変化させた時の強弱の変化を定量することにより、より有用なアゾリウム助触媒の開発につなげる。後者に関しては、前年度に開発した方法論を元に、種々の電気化学的・光化学的触媒反応で用いられる溶媒系における標準酸化還元電位の測定に取り組む。これにより、これまでそれぞれの反応系で報告されてきた(そして、これからなされるであろう)それぞれの触媒反応の効率について統一的評価できるようになる。これらの測定においては、液間電位の推定が要点となるので、そのために必要な基準物質の開発に取り組む。
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