2016 Fiscal Year Research-status Report
光・電場に応答する新規イオン性コレステリック液晶材料の創製
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16K17886
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
キム ユナ 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (00648131)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 液晶 / キラルドーパント / 光異性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオン性ネマチック液晶相は、イオン性のスメクチックやカラムナー液晶相に比べて粘性が低いため、外部刺激により分子配向やイオン移動の制御が容易にできる長所がある。さらに、キラルドーパントを導入すれば、コレステリック相を発現させることができ、ブロードバンド反射やその反射特性を利用したディスプレーの開発も期待できる。しかし、ネマチック相を発現するイオン性液晶分子を開発することは非常に難しい。これはナノ相分離構造が強く誘起されてしまうからである。本研究課題では、分子パッキングをある程度減少させ、室温から広い温度範囲でネマチック相を発現する単一成分のダイマー型イオン性ネマチック液晶を開発し、次に高いねじり力や光異性化によるねじり力のスイッチング特性を持つイオン性キラルアゾベンゼンドーパントを開発する。最終的にこの新しいドーパントをダイマー型イオン性ネマチック液晶にドープし、光照射または電場により迅速にらせん構造をスイッチングできるイオン性コレステリック液晶材料を構築する。 これまで、ダイマー型液晶の分子骨格を基に、多様な新規のイオン性ネマチック液晶群を設計・合成した。その後、合成した新規のダイマー型ネマチックイオン性液晶材料の物性の評価を行った結果、棒状の分子で、メソゲン部位にフルオロ基を導入した化合物が非常に広い温度範囲でネマチック相を示すことを見出した。さらにこの液晶がネマチック相で7x10 -6 S/cm のイオン伝導度を室温で示すこともわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイマー型液晶の分子骨格を基に、多様な新規のイオン性ネマチック液晶群を設計・合成した。得られた液晶材料の物性を評価し、本研究に最適なイオン性ネマチック液晶を選定した。分子構造の特徴は、メソゲンを二つ持つ点、導入するイオン性部位や極性基を一つのメソゲンに偏らせている点であり、メソゲン間のπ-π interactionを減少させ、スメクチック相の形成や結晶化が阻害されるようにした。スペーサーやイオン部位の位置、カウンターイオンの種類も重要であると考えられ、それらを様々に変更した一連の誘導体を合成した。その後、合成した新規のダイマー型ネマチックイオン性液晶材料の物性を偏光顕微鏡観察、DSC測定やX線回折測定により評価した。合成した新規の化合物中で、イオン性官能基を分子中央部に持ち、シアノ基がメソゲンに導入されているベント型分子や、メソゲン部位にフルオロ基を導入した棒状分子でネマチック相の発現が確認できた。特に、メソゲン部位にフルオロ基を導入した化合物は、10oC~75oC程度の非常に広い温度範囲でネマチック相を示すことを見出した。この化合物の溶液及び液晶相でのイオン伝導度をACインピーダンス法で測定した結果、ネマチック相を示す室温では最大7x10 -6 S/cmのイオン伝導率を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン部位を持ち、高いねじり力を持つイオン性キラルアゾベンゼンドーパントの開発し、平成 28 年度に得られた新規ネマチックイオン液晶にドープして得られるイオン性コレステリック液晶の物性評価とそれを用いたデバイスへ応用展開を検討する。キラルドーパントは、不斉ユニットとしてナフタレンとアゾベンゼンからなるシクロファン骨格を用いる。アゾベンゼンの光異性化が起こり、そのねじれ誘起力が変化し、結果として、ホスト液晶にドープされた際に得られるコレステリック液晶相のらせんピッチを光により制御できる。イオン性ネマチック液晶との相溶性をあげるため、シクロファンユニットにイミダゾリウム塩やアルキルアンモニウム塩を導入する。得られたドーパントの可逆的な光異性化などの基本的な光学特性を明らかにする。また、各種有機溶媒への溶解性を確認し、分子のジオメトリを明らかにする。開発したキラルドーパントを最適のホストイオン性ネマチック液晶にドープし、コレステリック液晶相が発現するかを確認する。その後、紫外光/可視光照射により、ドーパントのアゾベンゼン部位の異性化を誘起し、コレステリックピッチや反射波長の変化、液晶相相転移温度の変化を詳細に調べる。さらに、電圧印加によるらせん周期のピッチ変化と勾配特性を評価する。得られたイオン性液晶材料の応用性を探るため、反射カラー変調及び光記録特性を検討し、コレステリックディスプレーに応用できるかを検討する。次に、勾配のついたらせん周期を誘起して、幅広い波長領域にまたがる反射バンドを誘起できるかを明らかにし、ブロードバンドリフレクターへの応用も検討する。
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