2016 Fiscal Year Research-status Report
有機へテロ接合界面で生じる高密度電荷注入による機能創製
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16K17887
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 幸裕 北海道大学, 理学研究院, 助教 (40443197)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機導体 / 表面・界面物性 / 分子性固体 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,有機エレクトロニクスの研究は世界中で活発に進められている。しかし,一般的に分子は閉殻な電子構造をとること,不純物のドーピングが困難であることから,効果的に有機物へ電荷注入を行う手法の確立が求められている。本研究では,電子供与性分子(ドナー)/電子受容性分子(アクセプター)結晶の接触界面で電荷の移動が生じ,金属的な挙動が観測されるという先行研究を基に,金属的挙動の生じる材料の探索を行った。 (1)単成分結晶の接触界面 アクセプター分子を2,5-difluoro-7,7,8,8,-tetracyanoquinodimethane (F2TCNQ)に固定し,様々なイオン化ポテンシャル(IP)を有する8種類のドナー結晶を接触させてその界面の電荷移動量と電気伝導度を系統的に調査した。この結果,すべての組み合わせで界面の電荷移動に起因した高伝導化が確認された。特にF2TCNQの電気陰性度との差が1.1 eVにも及ぶピセン結晶の界面において高伝導化と共に温度の低下とともに抵抗が減少するバンド伝導的な挙動も確認できたことは,計画当初の予想よりも良い結果であった。この結果から接触による有機結晶表面への電荷注入法は,分子のドナー性やアクセプター性に強く制限されることなく,幅広い物質に応用可能であることが期待される。 (2)イオン性基底状態の電荷移動錯体とドナーの接触界面 既にアニオン‐カチオン間で完全に電荷が移動しMott絶縁体になった物質にドナー分子ルブレンの結晶を接触させ電荷の注入を試みた。その結果,その界面も高伝導化を示し,金属的な挙動を観察することができた。これはドナーであるルブレンが,Mott絶縁体結晶表面に電子注入を行ったことに起因したと考えている。またMott絶縁体結晶を用いた電界効果型トランジスタを作製することで物理的な電荷注入と化学的な電荷注入と比較も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きなIPを持つドナー分子であってもバンド伝導的な輸送特性が確認されたこと,またMott絶縁体とドナー分子結晶界面でも金属的挙動が確認されたことから,興味深い系の探索に成功し,初年度の研究としてほぼ計画通りに遂行されていると考えている。 (1)単成分結晶の接触界面 計画書に記した分子に加えて数種類のドナー分子結晶とF2TCNQ単結晶から成る界面の電気伝導度を測定し,金属的挙動の確認できる分子の条件をほぼ見出した。また,その結果・内容においては,接触による電荷注入法が計画当初の予想を超えて非常に幅広い物質に適用可能であることが見いだされている状況である。この為本手法が,有機半導体表面への電荷注入法として非常に有望であることが確認された。また一部の組み合わせについては,磁気測定を行い,キュリー常磁性のような振る舞いが見られている。 (2)イオン性基底状態の電荷移動錯体とドナーの接触界面 いくつかのイオン性の電荷移動錯体にルブレンやBEDT-TTF単結晶を接触させ,その界面の輸送特性を観察した。特に,バルクの状態でMott絶縁体となっているk-(ET)2Cu2(CN)3塩とルブレン結晶をはじめとするいくつかのドナー結晶の接触界面において,常温から金属的な挙動が確認されている。また低温において電荷移動量が変化するいわゆる中性-イオン性転移を示す結晶とドナー結晶の接触界面においても高伝導化が確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,イオン性基底状態の電荷移動錯体とドナー結晶界面に生じる機能を探索しつつ,初年度に見いだされた低温まで金属化が見られる系の不足実験を行う。 (1)単成分結晶の接触界面 ピセン/F2TCNQの接触界面における電荷移動量の評価とそのメカニズムの解明を目指す。ESR,導電性AFMや顕微反射可視分光等で,接触界面の電子状態を解明する。また光照射により電荷注入量を増幅させた界面の輸送特性についても調査したいと考えている。 (2)イオン性基底状態の電荷移動錯体とドナーの接触界面 今後もいくつかのMott絶縁体やドナー分子の接触を検討し,金属的な挙動が得られる組み合わせを複数見出したいと考えている。更には,三角格子系やスピンラダー系などの材料とドナー結晶界面に生じる機能を探索したいと考えている。またこれらの系では,トランジスタによる物理的な電荷注入と比較し,本研究で対象としている化学的電荷注入の特徴を明確にしたいと考えている。
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Research Products
(4 results)