2016 Fiscal Year Research-status Report
ペロブスカイト型酸化物の力学-光エネルギー変換機構解明と材料設計
Project/Area Number |
16K17895
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
上村 直 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (80737370)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペロブスカイト型酸化物 / エネルギー変換 / 蛍光 / 蓄光 / 応力発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペロブスカイト型酸化物における力学-光エネルギー変換機能の創出に成功し、「本来みえない力」を可視化する応力センサとしての応用に目処を付けた。しかし,肝心の応力発光機構が明らかになっておらず,材料の設計指針は未だ確立できていない。本研究では、新規材料開発研究を通して応力発光現象を多角的な視点から究明し、得られた知見を基に画期的な応力発光材料を創製することを目的としている。 本年度は、結晶構造が及ぼす効果を明らかにするために、ダブルペロブスカイト型酸化物(Sr3Sn2O7:Sm3+)および通常のペロブスカイト型酸化物(SrSnO3:Sm3+)の2種類の材料を固相法によって作り分けることに成功し、さらにこれらの応力発光特性の比較検討を行った。興味深いことに、ダブルペロブスカイト型酸化物の応力発光は、通常のペロブスカイト型酸化物の応力発光と比べて2桁以上も強い事が明らかとなった。このようなユニークな特性は他の希土類イオン添加(例えばネオジムイオン)によっても同様に観測されたことから、ダブルペロブスカイト構造がもつ構造的な特徴が応力発光現象に大きく寄与していることが明らかになった。結晶構造解析を行ったところ、ダブルペロブスカイト型酸化物の結晶格子パラメータは温度に対して異方的な振る舞いを示したのに対して、通常のペロブスカイト型酸化物においては各々の格子パラメータは等方的に変化した。また、熱ルミネッセンス解析によって、材料内の欠陥トラップ準位を評価したところ、ダブルペロブスカイト型酸化物においては室温よりも深いレベルに電子(あるいは正孔)が捕捉されていることが明らかとなった。以上のように、ダブルペロブスカイト型酸化物における特異な構造的特徴と欠陥構造が応力発光特性に大きく寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダブルペロブスカイト型酸化物における応力発光の増強効果を明らかにしただけでなく、ペロブスカイト構造の次元制御技術が蛍光の増強、さらには蓄光現象の発現に極めて重要であることをつきとめた。ダブルペロブスカイト型酸化物および通常のペロブスカイト型酸化物の蛍光・蓄光現象についてはJournal of the Ceramic Society of Japanにて論誌発表を行った。応力発光現象の解明にもつながる重要な成果であると考えているために、自己評価を「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ペロブスカイト型酸化物の応力発光特性、結晶構造の相関、欠陥トラップの影響などを定性的に評価することができたと考えている。今後は、光電子分光法による希土類イオン準位の定量解析や第一原理計算などに取り組み、実験的・理論的手法の両面から応力発光機構解明を行う方針である。これまでの応力発光特性評価方法はそのままに、次はサンプル作製条件の最適化を行い、ペロブスカイト型酸化物中に形成された希土類イオン準位を光電子分光法によって定量的に評価する。そして、これらの得られた実験データを理論計算の結果と照らし合わせ、希土類ドープペロブスカイト型酸化物のバンド構造を明らかにすることで、応力発光機構の解明に繋げる。
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Research Products
(6 results)