2017 Fiscal Year Research-status Report
結晶フォトクロミズムと相転移に基づく非線形複合応答機能材料の創生
Project/Area Number |
16K17896
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
北川 大地 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 助教 (50736527)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 単結晶-単結晶相転移 / ナノワイヤー / マイクロリボン / フォトメカニカル現象 / 紫外光照射方向依存性 / 結晶化誘起増強発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光応答性分子結晶であるジアリールエテン結晶のフォトクロミズムと結晶相転移に着目し、フォトクロミック反応挙動、発光特性、フォトメカニカル現象について研究を進めている。本年度は、昨年度の研究において見出した長鎖アルキル基を有するジアリールエテン結晶の単結晶-単結晶相転移および特異なフォトメカニカル現象について詳細に検討した。示差走査熱量(DSC)測定を行うと、相転移に由来する吸熱ピーク、発熱ピークが昇温過程および冷却過程でそれぞれ観測された。この棒状結晶に室温で紫外光を照射すると、結晶は紫外光照射のみで屈曲・戻りの往復運動を行い、可視光照射で再び屈曲・戻りの往復運動を行うという特異なメカニカル挙動が観測された。フォトクロミック反応と結晶相転移が組み合わさることで複雑な挙動となっている。さらに、紫外光を照射した結晶に対して温度を変化させると、温度変化に伴って結晶相転移が起こり、結晶が温度に応答して屈曲することを見出した。光と熱を組み合わせることで、より複雑な機能を持った結晶の作製に成功した(D. Kitagawa et al. Chem. Mater., 2017, 29, 7524)。また、ジアリールエテン結晶ナノワイヤーおよびマイクロリボンを作製し、それぞれのフォトメカニカル現象について詳細に検討を行った。特に、マイクロリボン結晶において、結晶の形状変化のモードが紫外光の照射方向に依存して変化することを見出した(D. Kitagawa et al., Nanoscale, 2018, 10, 3393; J. Am. Chem. Soc., 2018, 140, 4208.)。さらに、チオフェン環の2位がエテン部に結合したInverse型ジアリールエテンの置換基を修飾することで結晶化誘起増強発光を示すことを見出している。今後、詳細に検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、光応答性分子結晶であるジアリールエテン結晶のフォトクロミズムと結晶相転移に着目し、フォトクロミック反応挙動、発光特性、フォトメカニカル現象について研究を進めている。平成29年度の研究において、フォトクロミック反応と単結晶-単結晶相転移が引き起こす特異なフォトメカニカル現象、ジアリールエテン結晶のフォトメカニカル現象に対する紫外光照射方向の重要性、ジアリールエテン結晶の結晶化誘起増強発光などこれまでにない現象を見出している。これら研究成果を学術論文、学会発表およびプレスリリースを通して公表し、おおむね順調に進展している。さらに、特筆すべき点としてACSのJ.Am.Chem.SocのCoverとして研究がクローズアップされ、化学工業日報などのメディアで取り上げられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、フォトクロミック反応を用いて相転移を制御する、あるいは、相転移を用いてフォトクロミック反応を制御することにより従来の光反応率に対する線形的な応答を超克し、非線形的に大きな物性変化を示す材料を創出することを目的とし研究を進めている。これまで、順調に研究計画通り進捗しており、今後も計画通りに研究を進める。来年度は特に、フォトメカニカル結晶、結晶化誘起増強発光について詳細に検討を進め、学術論文として公表できるよう努める。
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