2016 Fiscal Year Research-status Report
スイッチング包接体の合成および自己組織化構造と相転移挙動の解明
Project/Area Number |
16K17909
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 利菜 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (90771725)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ポリロタキサン / ブロック共重合体 / ミクロ相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超分子構造の一種であるポリロタキサンを応用し、ブロック共重合体を軸分子として用いることで刺激によって環状分子がブロック共重合体上で移動する材料の新規合成、およびその応用を目指している。平成28年度は、材料の分子設計を確立するために、軸分子として利用するブロック共重合体の分子量や組成が環状分子の動きに与える影響を調べた。軸分子のブロック共重合体には汎用のポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド(PEO-PPO-PEO)トリブロック共重合体を選択し、分子量が16k-27k mol/gのものを用いた。また、環状分子はβ-シクロデキストリン(CD)を用いた。PPOの重合度が30のトリブロック共重合体を用いてポリロタキサンを合成した場合、PPOに対するβ-シクロデキストリンの被覆率が93%になったのに対し、PPOの重合度が50から70のトリブロック共重合体を用いてポリロタキサンを合成した場合は被覆率が56-57%となることがわかった。次に得られた各種ポリロタキサンの、溶液中におけるCDの配置を明らかにするために核磁気共鳴測定を行った。その結果、PPOの被覆率が90%のポリロタキサンはジメチルスルホキシド、および水中両方においてほぼ全てのCDがPPO上に存在するのに対し、被覆率が56%のポリロタキサンでは水中においてCDがPEO上に移動することがわかった。さらに、それぞれの溶液から徐々に溶媒を蒸発させることによってポリロタキサンのフィルムを作製し、小角X線散乱測定を行ったところ、水溶液からキャストを行った被覆率が56%の試料以外の全ての試料でミクロ相分離に基づく周期構造が観察された。以上より、軸分子にPEO-PPO-PEOを用いたポリロタキサンはキャスト溶媒を変化させることによって、環状分子の配置が制御可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、溶液中でのスイッチング転移の解明とバルク中での自己組織化構造形成の確認は平成29年度に行う予定であったが、平成28年度中にある程度の知見を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では軸分子としてPEO-PPO-PEOを用いたが、それ以外の化学構造を用いた場合も同様なことが可能かどうかを明らかにする。さらには環状分子の化学修飾が溶液中でのスイッチング転移の解明とバルク中での自己組織化構造形成に与える影響も明らかにしていく予定である。また、バルク中でのスイッチング転移、それに伴う自己組織化構造の転移についても解明し、これまでにない外場印加(力場など)が動的な刺激によって相転移する全く新しい材料の創成を目指す。
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Research Products
(8 results)