2016 Fiscal Year Research-status Report
セルロース水酸基を基点とする高位置選択的グラフト化ボトルブラシの創製
Project/Area Number |
16K17914
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榊原 圭太 京都大学, 化学研究所, 助教 (20618649)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | セルロース / ボトルブラシ / リビングラジカル重合 / ヤヌス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、主鎖をセルロースに、異種グラフト側鎖を位置選択的に導入した高分子ヤヌス型ボトルブラシが形成する新たな高次構造の創出を目的とする。 本年度は、キャラクタリゼーションに耐え得る量を得るための合成ルートの確立し、得られるヤヌス型ボトルブラシの溶液中におけるコンホメーションの解明に取り組んだ。まず、6位一級水酸基にポリスチレン鎖、2,3位二級水酸基にポリエチレングリコール鎖を位置選択的に導入したセルロース系ヤヌス型ボトルブラシを目的物と定め、高収率な反応を適用し、天然セルロースから4ステップにて合成した。本合成ルートと平行して、一級と二級水酸基の反応性の差異をに着目し、保護基を用いない合成ルートも検討した。次に、得られたセルロース系ボトルブラシの溶液をSEC-MALS測定および放射光小角X線散乱測定に供した。得られた結果を高分子溶液物性の理論と比較することで、ボトルブラシを決定付けるファクターの一つ、剛直性パラメータ、を算出した。得られた結果を既報の合成高分子主鎖から成るボトルブラシのそれと比較し、考察した。その結果、(1)側鎖導入による剛直性パラメータ値の増大、を確認すると共に、(2)側鎖の排除体積効果よりもセルロースの高い剛直性の効果が支配的である、と判明した。さらに、(3)ヤヌス型にすることで、側鎖の相分離効果によりらせん性を示唆する、といった期待通りの結果を見出した。本結果は、次年度で検討する新規高次構造創出の大きな足がかりとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セルロース系ヤヌス型ボトルブラシの合成ルートを確立し、SEC-MALSやSAXS測定による評価ができ、本ボトルブラシの基礎的知見、とくにらせん性、を得ることができた。今後、側鎖鎖長や側鎖導入位置が高次構造に与える影響を調べていくが、そのための合成および評価基盤が揃ったため、初年度としては研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
側鎖として導入するポリスチレンやポリエチレングリコールの鎖長、導入率、および導入位置、がコンホメーションに与える影響を、SEC-MALSおよびSAXSなどの測定により調べ、構造因子との相関を明らかとする。それら知見に基づき、セルロース系ヤヌス型ボトルブラシの高次構造(ミセル、薄膜、等)をTEMやAFMなどの構造観察により解明する。
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Causes of Carryover |
今年度、セルロース化学合成モノマーであるグルコースオルトエステル誘導体を原料としたボトルブラシの合成も検討したが、下記の理由により中断した。すなわち、天然セルロースを原料とした合成ルートの方が化学合成のルートよりも最終目的物のサンプル量を多く得られるだけでなく、後者では主鎖長が大きくならないために、ボトルブラシを光散乱で検出できず、本研究の目的を達成できなかったためである。よって、真空排気装置およびマニホールドの購入を断念したために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、放射光X線による分析が極めて有用であることが判明したため、次年度は放射光施設での実験を申請時の計画以上に増やすため、それに伴う消耗品と出張費を計上する。さらに、本研究室の大学院生等の補助要因を増やし、合成及び構造解析のための消耗品費を増額することで、 側鎖ポリマーの種類、分子量(体積分率)、および側鎖導入位置をパラメータとしたボトルブラシのライブラリ化を実現する。
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