2016 Fiscal Year Research-status Report
微粒子分離のための磁路型マイクロ電極の作製と磁気―誘電ハイブリッド泳動微法の開発
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16K17920
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
飯國 良規 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60452215)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 磁気泳動 / 誘電泳動 / 微粒子分離 / ハイブリッド泳動 / マイクロ電磁石 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず本課題の根幹となる針状磁路型マイクロ電極を磁路型電極の作製を行った。直径90-500 μmのパーマロイ線を電解エッチングすることで先端を先鋭化し、直径50 μmのエナメル線をコイル状に巻きつけることにより磁路型マイクロ電極とした。パーマロイ線の直径やコイルの巻き数、位置等の検討することにより、磁路型マイクロ電極の先端付近に効果的に磁場を印加できる条件を明らかにし、電磁石として実用が可能な磁路型マイクロ電極を作製することができた。 作製した磁路型マイクロ電極の磁気特性を評価するために、溶融シリカキャピラリー中においてフローにより輸送される0.155 M KCl水溶液中の粒径10 μmの磁性ポリスチレン粒子の磁気泳動挙動を観測したところ、磁路型マイクロ電極の先端から約500 μmの距離から磁性粒子は加速され、先端付近約200 μmの範囲に引き付けトラップすることが可能であり、マイクロフロー中への局所的な磁場の印加が可能であった。一方、非磁性のポリスチレン粒子の挙動を同様に観測したところ、その一部が磁路型マイクロ電極とは逆側の壁にトラップされた。これはポリスチレン粒子自体の反磁性的な挙動であると考えられ、これは超伝導磁石を用いた強磁場中やMnCl2水溶液等の磁性溶液中では見られるが、非磁性溶液中で報告例はほとんどなく、非常に先鋭化された磁路による特異的挙動である。このことより磁路型マイクロ電極を用いることで、簡易かつ生体微粒子に適した系において、磁性ナノ粒子修飾を必要としない磁気泳動による分離、分析の可能性を示すことができた。 さらにこの磁路型マイクロ電極を用いてTIOガラス上にPDMSにより作製した微小容器中に滴下した0.155 M KCl水溶液中の磁性ポリスチレン粒子の磁気泳動と誘電泳動の同時観測をすることができ、ハイブリッド泳動法としての可能性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、本課題の根幹となる針状磁路型マイクロ電極のデザイン、作製条件を検討することで、磁場を磁路型マイクロ電極の先端付近に局所的かつ効果的に印加が可能なシステムを構築することができた。さらに、この磁路型マイクロ電極を用いた、マイクロフロー中での微粒子の磁気泳動の観測により、マイクロメートルサイズの磁性粒子は磁路型マイクロ電極の先端へ磁気的引力により引き付けトラップすることを確認でき、一方で、非磁性粒子については斥力が作用することが明らかになった。これにより、本課題において作製を行った磁路型マイクロ電極の磁気的特性は、マイクロフロー系への有用性が確認でき、マイクロチップ分析への応用、展開が可能であることが示唆され、本課題の第一段階は計画通りクリアされている。 磁路型マイクロ電極の磁気特性に続いて、電極としての特性も評価を行った。ITOガラス表面と先鋭化されたマイクロ電極の間に交流電場を印加することにより、マイクロメートル微粒子の誘電泳動挙動が確認できた。さらに、磁性粒子を用いて磁気泳動と誘電泳動を同時に観測したところ、微小ながら二つの泳動が同時に作用する様子が観測された。現在、定量的な解析を行っているところであり、また、より微小な粒子については今後の検討課題であるが本年度の計画をおおむね順調に進展させている。 さらに、磁路型マイクロ電極の応用として、磁気泳動と電磁泳動を同時に観測し、ここでも同時作用による磁路型マイクロ電極先端付近での特異的な泳動挙動を確認することができたことから、ハイブリッド泳動法の新たな展開も期待できる成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
針状字路型マイクロ電極によるマイクロメートルサイズの微粒子の磁気泳動、誘電泳動、磁気-誘電ハイブリッド泳動が確認できたことから、まず観察のし易い10 mmのポリスチレン粒子を用いて印加磁場および電場条件を変更した際の泳動挙動を観測し、その泳動方向および速度を定量的に解析し、磁気泳動支配または誘電泳動支配となる上条件を明らかにすることで泳動制御法について確立する。さらに、より小さいサイズの粒子へ適用するため、サブマイクロメートルサイズの微粒子のハイブリッド泳動挙動を蛍光修飾粒子を用いて明らかにする。さらに、マイクロメートルサイズのポリスチレン粒子を磁性ナノ粒子修飾することで、低修飾密度では磁気力が弱いため誘電泳動支配、高修飾密度では磁気力が多きくなるため磁気力支配となるような条件を検討し、磁性粒子修飾量、つまり表面状態によるハイブリッド泳動分離法の検討を行う。これらを確立したのち、実際に生体細胞を試料としてハイブリッド泳動を行うことで生体試料への展開を図る。 上記と並行して、マイクロフルイディクスへの応用として、リソグラフィーによる電極パターニングおよび電解析出によるガラス基盤上へのパーマロイ薄膜のデザインを行い、その基板上へマイクロ流路を成形することにより、磁路型マイクロ電極を有するマイクロチップをデザイン、作成する。このとき、磁場は永久磁石を用いて薄膜上磁路型マイクロ電極を通して印加し、磁路型マイクロ電極の厚さや形状等により効果的な印加法を検討することで、作製したマイクロチップを用いて各種微粒子をマイクロフロー中におけるハイブリッド泳動法により連続的に分離を行う手法を開発する。
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Research Products
(2 results)