2016 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレス低減の検出を目指した水素分子の超迅速分析法の開発
Project/Area Number |
16K17923
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
松浦 宏昭 埼玉工業大学, 工学部, 准教授 (50558418)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電気化学センサ / 含窒素カーボン / 溶存水素 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究計画では、我々が開発を進めている水素を直接電解酸化できる含窒素カーボン電極の表面構造と触媒活性点の物性評価を行う計画であった。この計画に対してはXPSを用いて表面の元素組成や化学構造を調べた結果、アミノ基や窒素-窒素結合を有する各種官能基群と白金粒子の存在を明らかとした。また、含窒素官能基群と白金粒子との相互作用により、複合的な触媒活性サイトが形成されていることが明確となった。一方で、より詳細な化学構造については、現状未確定な部分が残されているが、含窒素官能基群と白金粒子がコラボレーションしたこれまでに無い触媒活性サイトが水素の直接電解酸化特性に寄与している事実を明らかとした。 また、もう一つの研究計画として盛り込まれていた水素に対する含窒素カーボン電極の電気化学特性の把握については、本年度設備導入した電気化学測定システムを活用し、定量的に触媒活性を評価した。その結果、電極作製時の電解改質時間の影響を大きく受けることや、触媒活性点の安定性に関する知見を得ることができた。特に含窒素官能基群と白金粒子の相互作用については、比較的強固である事実が判明し、電極の安定性の面では大きな優位性を示すものである。 一方、溶存水素の電気化学センサの検討について、平成29年度の計画を一部前倒ししてプロトタイプのセンサを構築し、溶存水素の電気化学センサの構築を達成することができ、その研究成果が日刊工業新聞に掲載された(2017.02.10)。センサ性能としては、まだ多くの課題があり、今年度の研究により、その問題点を具体的に抽出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素分子の超迅速分析法の開発という最終目標に対して、平成28年度は、水素分子を直接電解酸化できる含窒素カーボン電極の物性や電気化学特性を系統的に調査することを中心に検討を進めた。その結果、触媒活性サイトの化学構造が水素分子を電解酸化する構造を有する知見を得ることができたこと、更に電極の電気化学特性が定量的に把握することができ、より高活性な水素分子検知用電極の開発に展開することができる知見を得ることができた。また、開発した電極を検知電極として、2極式の定電位クーロメトリーによる溶存水素センサのプロトタイプを製作するに至り、溶存水素が30秒で測定できる特性を得られたことは、平成29年度以降の研究計画をスムーズに遂行することができる可能性が高い。また、電極特性として、水素を直接電解酸化できる電位領域が広範囲にわたっていることが明らかとなったことは、平成29年度以降、実試料を用いたセンサ特性の検証でも夾雑物質の影響を軽減できる可能性が示唆される。以上の理由から、平成28年度の研究進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度において電極特性の把握が概ねできたことを受けて、平成29年度においては触媒活性点の化学構造と相互作用について、より詳細に検討を進める予定である。具体的には、より高分解能のXPSを活用することを検討し、平成28年度に蓄積した表面構造の解析データを基にした評価とデータの取得を目指す。また、溶存水素の電気化学センサの検知電極に適用を目指す電極は、繊維状のカーボンフェルトを基材として用いることから、カーボンフェルトを基材とした電解処理条件については、更なる精査と電極触媒活性の向上が必要となる。そのような課題に対して今後の研究方策としては、触媒活性点の基となる電解液中の各物質濃度の経時変化と触媒活性点の形成との間の相関を明確にし、最適な溶存水素検知電極の作製法の確立を目指す。さらに、実際の溶存水素センサ測定用の電解セルにおいては、その構造の最適化や測定条件の決定が必要となる。このため、溶存水素試料の滴下量や設定電位、再現性といった電気分析化学的観点における系統的な評価を実施し、明確化する。
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Causes of Carryover |
消耗品の調達価格の変更により、当初予定の所要額との差異が生じた。しかし、研究計画に影響するものではない範囲となっており、本予算は次年度使用額として計上する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験試薬等の消耗品としての活用を検討しており、一部試薬の価格改定等の情報もあるため、その充当により予定購入試薬等への支出に当てる予定です。
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