2016 Fiscal Year Research-status Report
酵素処理差別化を用いたDNA付加体のオミクス分析法の開発と非侵襲的分析への展開
Project/Area Number |
16K17924
|
Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
村上 博哉 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (40515128)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | DNA付加体 / 網羅的 / LC-MS/MS / 高感度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題の目的は,低・非侵襲的試料に対応可能な網羅的なDNA付加体の定量分析手法を確立し,DNA付加体のリスクマーカー候補物質の探索およびガン研究の支援を可能にすることにある。平成28年度の研究実績としては,主に1, 網羅的なDNA付加体の定量分析のための分離系の確立,2, 前処理系の確立のための充填剤の開発,などに関して重点的に行った。以下にその概要について記載する。 1の分離系の検討としては,electrospray ionization (ESI)において,一般的に網羅的なDNA付加体の定量分析時に用いられる逆相分離系と比較して,高感度化が可能である親水性相互作用クロマトグラフィー(hydrophilic interaction chromatography,HILIC)分離を用い,網羅的なDNA付加体分析のための分離系の確立に関して検討を行った。ESI-MS検出の前段であるLC分離能の高性能化は,高精度な定量分析において,非常に重要な課題である。HILIC分離系を用いたDNA付加体の高分離系の確立を目指し,市販品として購入可能な数種類のHPLC用カラムと種々の溶離液組成等について検討をし, DNA付加体分析時の分離挙動の変化に関して検討を進めた。 2の固相抽出用の充填剤の開発に関しては,低・非侵襲試料などを想定した場合,前処理系の確立は必要不可欠である。それを可能にするためには,市販品の各種条件検討を進めることと並行して,DNA付加体分析に最適化された固相抽出用の充填剤の開発も必要であると考えた。そこでDNA付加体のような極性化合物へも適用することが可能な新規の逆相系固相抽出用充填剤の開発を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に関するこれまでの進捗状況は,以下の通りである。 1の分離系の検討であるHILIC分離については,第一条件として,大過剰に存在する未損傷体と極微量成分であるDNA付加体との間の分離が必要不可欠である。そこで充填剤の官能基による分離挙動の違いや,種々の有機溶媒を任意の割合にて配合した溶離液を適用した時の分離挙動の変化について検討を進めた。その結果,いくつかの高分離能を達成することが可能な条件を見出すことにこれまで成功している。 2の前処理系の確立においては,逆相分離系の固相抽出用充填剤の中でも,現在、環境分析から生体試料分析においても汎用的に利用されているHydrophilic-Lipophilic Balance (HLB)型の充填剤の高機能化に関して検討を行った。HLB型は,疎水性部と親水性部からなり,極性化合物への適用が可能なものである。基本骨格となる疎水性部を形成する有機モノマーとしてdivinylbenzeneを適用し,各種親水性モノマーを含有した充填剤を網羅的に合成し,核酸化合物等の捕捉特性に関して検討を行った。その結果,これまでに核酸化合物のような極性化合物における捕捉特性を向上させることを可能にするモノマーの選定に成功している。また親水性部のモノマーの最適化に加え、親水性以外の副次的な相互作用機能を発現させることが可能なモノマーを選定し,それを添加したものを合成し,核酸化合物の捕捉特性を向上させることについても検討を行った。その結果,一般的なHLB型充填剤では捕捉が困難な化合物の捕捉の可能性を示唆する結果をこれまでに得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
H28年度に得られた研究成果をもとに,さらなる高性能化に関して検討を進める。HILIC分離系に関しては,さらなる高分離性能を発揮できる各種条件の検討を行い,網羅的にDNA付加体を分離分析できる条件の検討を進める予定である。また前処理系に関しては,H28年度に開発した固相抽出用の新規HLB型のさらなる高性能化を進め,様々なDNA付加体を捕捉可能な前処理システムの構築を目指す。またこれら分離系及び前処理系の条件検討に加え,LC-MS及びCE-MSでの高感度化を達成するための分析系の包括的な条件の最適化を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
平成28年度は,4382円の未使用額が発生した。これは平成28年度末までに一定の研究成果が得られたため,無理をせずに次年度に繰り越したためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の物品購入費として使用する予定である。
|
Research Products
(18 results)