2016 Fiscal Year Research-status Report
新規時間分解X線吸収分光法の開発とマイクロ秒電極反応観測への応用
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16K17925
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
上村 洋平 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (30723647)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 時間分解 / XAFS / 光励起 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、電極上のマイクロ秒の時間領域で進行する化学反応の反応メカニズムを明らかにするために、蛍光X線にタイムスタンプをつけながら測定を行なう新規時間分解XAFS法を確立する。 本年度は、高速デジタルパルスプロセッサ及び蛍光X線検出器の購入を行い、それぞれの性能評価を行った。デジタルパルスプロセッサは、既に過渡的な信号変化が知られている二酸化バナジウム薄膜の反射率測定から、その時間分解能を評価した。1024 nm 30 psのパルスレーザーを用いると、二酸化バナジウムの反射率は、1 ns程度で反射率の減少がみられ、その後50 nsかかって元の強度に戻る。この変化をデジタルパルスプロセッサで観測すると、通常の時間分解能である1 nsでは、反射率の回復の様子を捉えられ、更に外挿機能を用いた高時間分解能モード(約10 ps)のでは、反射率の立ち下がり過程を捉えることが出来た。このことから、デジタルパルスプロセッサの時間分解能が計測システムを組むのに十分であることがわかった。蛍光X線検出器には、シンチレータ付きの光電子増倍管を採用した。光電子増倍管は検出の応答速度が速いことから採用したが、一方でエネルギー分解能のある半導体検出器とは異なり、目的の蛍光X線以外に散乱X線を計測してしまう問題点がある。そこで、散乱X線の計測を抑制するために、ソーラースリットの作成を行った。作成したソーラースリットの効果を検証するため、銅錯体を触媒とする電極触媒のin situ XAFS計測を行った。作成した光電子増倍管により散乱X線が抑制され、低濃度の試料でも十分に高いS/Nでスペクトルの計測を行なえることを確認した。この結果を受けて、効率的に蛍光X線を検出するための配置や、ソーラースリットの設計などを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際の試料を用いた測定までには至らなかったが、測定システムの中核となるデジタルパルスプロセッサと蛍光X線検出器の性能を評価し、当初の想定よりも短い時間分解能が得られることが確認出来た。本測定法を確立するにあたり、放射光施設の測定システムと同期を行なう必要性が出てきたため、現在測定プログラム等を立ち上げているが、作成は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在作成中のプログラムを使用して、デジタルパルスプロセッサを用いて、蛍光X線にタイムスタンプをつけながら時間分解XAFS測定を行なう。Auナノ粒子上のCu析出や色素増感剤などの電極上のマイクロ秒オーダーの化学反応について、測定を行なう。可能であれば、ナノ秒より短い時間スケールのダイナミクスについても計測を行いたい。
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Causes of Carryover |
当初計画をしていた高エネルギー加速器研究機構での実験を次年度に実施することとし、次年度に旅費として使用する様になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、旅費や実験消耗品の購入に充てる。
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