2016 Fiscal Year Research-status Report
選択的な光還元・微粒子化反応に基づく新規パラジウム分離法の開発
Project/Area Number |
16K17927
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
蓬田 匠 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (40743349)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パラジウム / 光還元 / 質量分析 / 沈殿分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力発電で使用した燃料中には、ウランの核反応により多種多様な放射性核種が生成する。その中の1つである質量数107のパラジウム(Pd-107)は、半減期が約650万年と長く、長期間に渡り放射線を放出して人体に影響を及ぼす可能性がある。しかし、放射性廃棄物中のPd-107の正確な分析のためには、高い放射能を持つ試料の取り扱いが不可避であり、分析前処理の簡略化が必要であった。そこで本研究では、放射性廃棄物中のPd-107の分析前処理法として、光還元を用いる非接触・選択的なPd分離法を開発する。この分離法では、密閉容器にレーザーを照射するだけでPdの分離が完了し、分離操作の簡略化によって分析作業者の被ばくや作業環境の汚染可能性の低減が可能になると期待される。 平成28年度は、光還元によるPd分離法の放射性廃棄物への適用可能性を検証するため、レーザー照射時の種々の分離条件を変えて、高レベル放射性廃液を模擬した試料からのPd回収試験を行った。エタノール含有率を0~50%まで変化させてPdの回収試験を行った結果、40%でPd回収率が極大となった。Pd濃度と比較して大過剰なエタノールの共存下でPd回収率が変化したため,エタノールがPdイオンに溶媒和するなど溶存状態へ影響を与えている可能性が示唆された。また、エタノール含有率に加え、レーザー照射時間、レーザー光のパルスエネルギー、溶液中のPd濃度の条件を変えてPdの回収試験を行った。条件検討の結果から、20分という短時間で60%程度のPdを他元素の混入率0.5%以下で選択的に回収できた。特筆すべきは、放射性廃液中で主要な放射能源となるSr,Cs,Baの除去率が99.9%以上と高い点である。簡易な分離操作で高いPd選択性を実現できることから、本分離法を用いることで放射性試料取り扱い時の被ばく・汚染可能性の低減が可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題として最も重要な、放射性廃棄物への適用可能性の検証を重視したため、本年度行う予定であった電気化学実験を次年度以降に延期することとした。そのため、本分離・分析法の放射性廃棄物への適用可能性の検証は進んでいるが、反応メカニズムの解明については当初の予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
正確なPd-107の分析値導出が可能かどうかを検証するため、本年度購入したクリーンベンチを用いて実際の分離作業を行い、質量分析法によるPd-107測定のためのバックグラウンドを評価する。また、選択的なPd回収が可能になる要因については、当初の予定通り電気化学および分光学的手法を用いて明らかにする。本年度得られたPd回収率のエタノール含有率依存性やPd濃度依存性の結果を元に、Pd回収率が大きく異なる条件において酸化還元電位やX線吸収スペクトルを取得し、Pdイオンの溶存状態がPd回収率に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本分離法の放射性廃棄物への適用可能性の検証を優先したため、電気化学実験を次年度以降とすることにした。購入品の破損や劣化などの危険性を避けるため、電極などの電気化学用消耗品の購入も先送りにすることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先送りにした電気化学実験用の消耗品を購入し、研究を実施する。
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