2017 Fiscal Year Research-status Report
選択的な光還元・微粒子化反応に基づく新規パラジウム分離法の開発
Project/Area Number |
16K17927
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
蓬田 匠 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (40743349)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パラジウム / 光還元 / 質量分析 / 沈殿分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は本課題の2年目であり、エタノール添加に起因するパラジウム(Pd)イオンの溶存状態変化をX線吸収微細構造分光(XAFS)測定により追跡するとともに、本分離法で回収したPdを誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)により分析することで、ICP-MSによる長寿命放射性核種Pd-107測定時のバックグラウンド評価を行った。 まず、エタノールの含有率を0%から90%の間で変化させてPdの回収試験を行った。その結果、Pd回収率はエタノール含有率が40%から50%程度で極大となり、それ以上のエタノール含有率では回収率が低下することが明らかとなった。このエタノール含有率によるPd回収率変化の要因を突き止めるため、硝酸-エタノール混合溶液中のPdに対し、Pd-K端XAFS測定を行った。エタノール含有率0, 50, 90%におけるXAFS測定の結果を解析したところ、Pd回収率が低い含有率0%, および90%では、溶液中のPdはほとんどイオンとして存在した。一方、Pd回収率が高い含有率50%では、一部のPdが極めて小さい金属Pd微粒子として存在することが示唆された。以上の結果から、エタノールの添加によってミクロな金属Pd微粒子が生成し、それが核となることで光照射時の微粒子成長が促進されたと考えられた。 また、質量分析法によるPd-107の分析値導出が可能であるかを検証するため、ICP-MSを用いた測定バックグラウンド評価を行った。回収したPd微粒子を王水に溶解し、希釈した微粒子溶解液をICP-MSを用いて測定したところ、測定妨害となる元素の混入が非常に少なく、微粒子溶解液の質量数107におけるシグナルはバックグラウンドと同程度であった。以上の結果から、本分離法はICP-MSによるPd-107測定時の前処理分離法として十分に適用可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
XAFS測定の実験結果により、ミクロな金属Pd微粒子が核となることで、その後のPd微粒子成長を促進し、Pd回収率に影響を与えるというメカニズムが示唆された。この結果により、光照射を行う前の溶液中のPdをミクロな金属微粒子の形態にすることで、より効率的なPd回収が可能になるという新たな知見が得られた。また、ICP-MSを用いたバックグラウンド評価では、本分離法で得られるPd微粒子を溶解した溶液試料への測定妨害元素の混入がほとんどなく、質量数107における測定バックグラウンドが極めて低いという結果が得られた。この結果は、本分離法がPd-107の分析前処理法として適することを示している。Pd微粒子形成メカニズムの新たな知見が得られたこと、及び測定バックグラウンドが十分に低く、実試料への適用が大いに期待できる結果が得られたことを踏まえると、研究の進捗はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、本研究で開発する新たなPd分離法が実際の放射性廃棄物へ適用可能であることを実証するため、14元素混合溶液とウラン標準液を混合した放射性廃棄物模擬試料に本分離法を適用し、その性能評価を行う。原子力発電用の使用済核燃料中には、主成分としてウランが多量に存在する。そのようにウランが多量に存在した状態からであっても選択的にPdを分離することができれば、実際の使用済燃料等の放射性廃棄物への適用も充分可能になると期待できる。
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Causes of Carryover |
本研究課題では、試料や容器の劣化を防ぐために、消耗品の購入を研究進捗に応じて行うこととしている。平成29年度において予定していた微量分析用の試薬類や容器類の購入を次年度に変更したため、当初計画に比べて消耗品購入費用が少なかったことから、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、購入時期を変更した微量分析用の試薬類や容器類の購入費用として使用する計画である。
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Research Products
(9 results)