2016 Fiscal Year Research-status Report
硬・軟X線光電子分光による二次電池電極材料の電子状態と電極性能との関連性の解明
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16K17928
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
朝倉 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 省エネルギー研究部門, 主任研究員 (80435619)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リチウムイオン電池 / 電極材料 / 酸化還元反応 / 光電子分光 / X線分光 / オペランド解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、硬・軟X線光電子分光を駆使し、リチウムイオン二次電池電極材料の電子状態の詳細な解析を行うことを第一の目的としている。平成28年度は複数の正極材料の光電子分光測定を実施した。LiFePO4や5V級のスピネル系正極などの遷移金属元素の2p内殻の光電子分光測定を実施し、価数を判定することができた。また、光電子分光と相補的な情報を与えるX線吸収・発光分光で得られた知見の検討を行った。X線吸収・発光分光では、内殻励起による光学遷移を観測しており、多重項計算等の理論解析を行えば十分な理解が可能となる一方で、光電子分光はより直接的に占有状態の状態密度の情報を得ることができる。 Mnスピネル系正極材料では、部分的な元素置換でサイクル特性が向上することが知られており、X線発光分光を用いて遷移金属-配位子間の軌道混成と電極性能の関連性を解明することができた。LiFePO4においては、充放電によるFe2+⇔Fe3+の酸化還元反応に関わらず、Fe 3d電子軌道とO 2p電子軌道の間の混成が弱い状態が維持されていることが判明した。これらの結果については、光電子分光測定を用いた検証をすることで、より確実な解釈を得られると考えられる。さらに、結晶構造が異なるスピネル系、オリビン系、層状酸化物系の間で、充放電による電子状態変化にどのような差異が生じているのかを、系統的に明らかにすることが重要であることを突き止めた。今後も、光電子分光、およびX線吸収・発光分光を軸に電子状態解析を進めて、充放電機構の解明に基づいた高性能電極材料の開発という応用研究への道筋を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに電極材料の光電子分光測定を開始し、形式価数で予想される価数とほぼ一致するような結果が出始めている。光電子分光と相補的に行うX線吸収・発光分光においては、十分な実験を実施することができた。また、X線発光分光の結果を中心に複数の学会発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
電極材料の光電子分光測定を加速するために、より多くの放射光ビームタイムを取得していく。同時に、通常のX線光電子分光についても実験を増やしていく。理論解析においては、クラスターモデルによる内殻スペクトルの計算を進め、価数に加えて結晶場分裂や電荷移動効果についても詳しく調べていき、X線吸収・発光分光の結果との比較を行っていく。オペランド光電子分光測定については、固体電解質の適用等による開発指針を検討していく。
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Causes of Carryover |
学会参加による旅費が増えた一方で、すでに保有していた装置の有効活用を進めて当初予定より物品費を圧縮し、差し引きの結果、少額だが次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
真空部品の消耗品費等に平成28年度未使用分を活用する。
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