2016 Fiscal Year Research-status Report
機能部位連携を志向したタンパク質多量体の構造制御法開発
Project/Area Number |
16K17935
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
長尾 聡 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (30452535)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘムタンパク質 / ミオグロビン / 二量体 / ドメインスワッピング / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の様々な形状・サイズのタンパク質多量体はボトムアップ型のプロセスで作られ、協同的な基質分子結合、金属原子の貯蔵、回転・並進運動などの機能を有している。このようなユニークな機能の人工再現には、タンパク質を決まった様式で会合させるナノレベルの構造制御が必要となるが、その知識基盤は十分に確立していない。本研究では、多量体の人工構築法を発展させるため、タンパク質の部分構造が分子間で交換するドメインスワッピングにより、同一分子間または異種分子間において形成させた二量体と、それをビルディングブロックとした四量体を構築し、多量体構築原理の理解と機能部位連携する多量体構築を目指す。 平成28年度は、本研究の基盤となる二量体の形成量と安定性の向上を目指し、ミオグロビンのヒンジ領域の二次構造形成能が二量体の形成および安定性に及ぼす影響の解明に取り組んだ。具体的には、ミオグロビンのヒンジ領域のアミノ酸配列を二次構造形成能の低いものから高いものへとアミノ酸置換した変異体を作製し、その二量体の形成量と安定性をゲルろ過クロマトグラフィーおよび示差走査熱量測定法により調べた。ヒンジ領域にへリックス形成能の高いアミノ酸を導入した変異体では、大腸菌に発現させたミオグロビンが精製段階において二量体を形成しており、変異型の二量体の安定性は野生型と比較して高いことが明らかとなった。また、変異型の二量体のX線結晶構造解析より、野生型の二量体と同様のドメインスワップ構造を有していることを明らかにした。以上の結果より、ヒンジ領域のアミノ酸の二次構造形成能がドメインスワップによる二量体形成に重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では、平成28年度はヒンジ領域の二次構造形成能が二量体の形成および安定性に及ぼす影響の解明に取り組む予定であった。予定通りに目標としたヒンジ領域の二次構造形成能と二量体の形成量および安定性の関係を明らかにすることが出来たため、おおむね順調に進展していると判断した。平成28年度に得られた結果は、タンパク質の多量体形成において新規な知見であるため、学術論文として報告する。現在、不足分のデータを収集し、論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は予定通りに研究が進展したため、平成29年度は研究実施計画に記した通り、二量体をビルディングブロックとした四量体構築に取り組む。具体的には、平成28年度に得られたヒンジ領域に二次構造形成能の高いアミノ酸を導入した変異体をベースとして、二量体分子間のへリックスーへリックス界面に疎水性相互作用が生まれるような変異導入を加え、へリックスバンドル型の構造形成を期待した四量体構築を行う。また、並行して、異種分子間において形成させた二量体構築も行う。
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Causes of Carryover |
当初、微量分光光度計を購入予定であったため予算計上していたが、研究実施場所において購入予定であった微量分光光度計と同等の性能を有する機械を利用できることになったため、購入を中止した。しかし、次年度以降の研究期間に購入する必要が生じる可能性があるため、次年度に予算を利用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在利用している微量分光光度計が利用不可能となった場合、微量分光光度計を購入するために使用する。
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