2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17950
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
葛原 大軌 岩手大学, 理工学部, 助教 (00583717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポルフィリン / 湾曲構造 / 金属錯体 / 環状化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的にアセン類やポルフィリンに代表されるπ共役分子は平面性の高い構造を有している。一方、フラーレンやカーボンナノチューブなどの化合物はπ曲面を有しており、平面型の分子とは異なった性質を示す。本研究において、湾曲構造有する化合物としてポルフィリン(2.1.2.1)を見出し、その合成法の確立と機能開拓を目的に研究を遂行した。本年度は、ポルフィリン(2.1.2.1)の合成法を確立するとともに単結晶X線構造解析によるポルフィリン(2.1.2.1)の構造評価を行った。 市販化合物から簡便に合成および;誘導体化が可能な1,2-ジピロリルベンゼン誘導体を用いて、酸触媒存在下ベンズアルデヒドと環化および酸化させることでポルフィリン(2.1.2.1)を比較的良好な収率で得ることに成功した。この反応は、電子供与基や電子球引基を持つベンズアルデヒド誘導体の他、チオフェンやピロール等のヘテロ環、エチニル基など幅広い置換基を導入可能な一般性の高い合成法であった。さらに、1,2-ジピロリルベンゼンのベンゼン環をチオフェン環に置き換えることにも成功し、様々な芳香環を導入出来る可能性を見出した。また、ポルフィリン(2.1.2.1)は一般的なポルフィリンと同様の配位子構造を持つため、様々な金属錯体へと誘導することにも成功した。これまでに、ニッケル、銅、パラジウム、白金、スズ、レニウム錯体の合成に成功している。 ポルフィリン(2.1.2.1)の構造は単結晶X線構造解析によって明らかにした。ポルフィリン(2.1.2.1)は、架橋o-フェニレン部位の立体障害によって大きく歪んだ構造を有していた。また、配位子する金属の大きさや配位構造によって曲率が変化し、中心部の金属によってポルフィリン(2.1.2.1)の湾曲構造を制御出来る可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の鍵であるポルフィリン(2.1.2.1)の合成法を確立し、様々な誘導体を合成することに成功した。また、ポルフィリン(2.1.2.1)の構造を単結晶X線構造解析によって明らかにし、ポルフィリン類では珍しく大きな湾曲構造を示した。現在、この湾曲構造を活用した環状多量体の合成および単離にも成功しつつあるなど、π曲面をもつ新たな分子として有望である。またこれらの結果は、論文1件および国内および国際学会にて発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ポルフィリン(2.1.2.1)の更なる誘導体化および機能開拓を目指して以下の研究を遂行する。 [1] 「湾曲構造を活用した環状多量体の合成」環状多量体の合成には、テンプレート分子や歪みを解消するための中間体が必要であるが、ポルフィリン(2.1.2.1)はそれ自身が湾曲構造を持つため、環状多量体合成のためのモノマーとして有用であると考えられる。 [2] 「多環芳香環が縮環したポルフィリン(2.1.2.1)の合成およびホスト-ゲスト化学への展開」 ポルフィリン(2.1.2.1)の曲がったπ曲面は、フラーレンなどの分子に対してホスト分子として利用可能であると考えられる。そこで、分子認識能の向上を目指して、多環芳香環が縮環したポルフィリン(2.1.2.1)の合成を行い、ホスト分子としての調査を行う。 [3] 「有機薄膜太陽電池材料への応用を目指した電子球引性基を導入したポルフィリン(2.1.2.1)の合成とデバイス応用」 近年、非平面構造有する化合物が、有機薄膜太陽電池の材料として有望であることが報告されている。そのため、ポルフィリン(2.1.2.1)にフタルイミド基などの電子求引性基を導入して、新たなn型材料の開発を試みる。
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Research Products
(13 results)