2017 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体の水和制御に基づくインテリジェント高分子電解質の開発と機能開拓
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16K17954
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
河野 雄樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (00772964)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオン液体 / 高分子電解質 / 刺激応答材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
僅かな温度変化等の外部環境で水和状態をスイッチングできるインテリジェント高分子電解質を用いた省エネルギー反応・分離プロセスへの利用展開を目指し、前年度までに開発した下限臨界溶解温度(lower critical solution temperature; LCST)型の相分離挙動を示す重合性イオン液体と、触媒部位としてプロリンを共重合させ、触媒機能を持つインテリジェント高分子電解質の開発を試みた。まず、重合基としてビニルベンジル基を導入したアルキルホスホニウムカチオンと、アルキルスルホン酸アニオンを組み合わせた種々の重合性イオン液体を、アクリル基を持つ重合性プロリンと異なるモル比で混合し、適切な架橋剤および熱重合開始剤を用いてゲル化を行った。得られたイオン液体由来高分子電解質ゲルの含水率の温度変化を評価したところ、プロリンのモル比を0.1に調整した高分子電解質ゲルが、LCST型の相分離挙動に由来する含水率変化を示した。一方、重合性プロリンのモル分率の上昇とともに含水率は上昇し、温度を変化させても含水率の変化は見られなくなった。次に、含水率変化がプロリンの触媒活性に与える影響を検討するため、LCST挙動を示したイオン液体由来高分子電解質ゲルを用いて水系アルドール反応を行った。その結果、僅かな昇温により転化率を制御できることを見出した。プロリンを触媒とする水系アルドール反応は、脱水縮合反応と加水分解反応を含む平衡反応により進行するため、LCST挙動に伴う系内の含水率制御により、効率良く反応を促進できたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、温度応答能を持つインテリジェント高分子電解質の適用先として、触媒反応プロセスに着目し、プロリンを共重合させた新たなイオン液体由来高分子電解質ゲルを作製することができた。プロリンを共重合後も温度応答能を維持するための合成条件の最適化や、水系アルドール反応への利用に向けた基礎データの集積を行い、温和な昇温での含水率制御により、反応を促進できることを見出した。これは、本研究の目標である省エネルギー反応・分離プロセス等への展開につながる成果であり、当初の研究計画に沿って順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、イオン液体を出発物質とするインテリジェント高分子電解質が、分離・抽出材料やセンシング材料に加え、触媒反応プロセス等への利用も可能性であることを明らかにした。一方で、重合性イオン液体と他のモノマーとの共重合を行った場合、本来備わっている環境応答能が損なわれてしまうという問題が生じた。今後は、環境応答能と触媒能など、複数の機能を両立するための設計指針の確立を行い、機能の更なる向上を図るとともに、各種分光学的手法を用いて、相分離現象の本質的な理解に向けた基礎研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度必要となった試薬及び実験器具等は揃えることができたため、次年度に予算を繰り越すこととした。 (使用計画) 次年度は計画通りに予算を使用するとともに、繰り越した予算は試薬購入に充てる予定である。
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