2017 Fiscal Year Research-status Report
第一原理計算による全固体リチウムイオン電池の正極/電解質界面の研究
Project/Area Number |
16K17969
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
春山 潤 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 産総研特別研究員 (80772003)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / リチウムイオン電池 / 全固体電池 / 界面抵抗 / 界面イオン拡散 / 固々界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウムイオン電池は高出力・高エネルギー密度特性を持ち携帯機器やハイブリッド車などの車載用電池に利用されているが, 充放電時の安全性に問題がある. リチウムイオン電池の構成要素である液体の有機電解質をイオン伝導性の無機固体で置換した全固体リチウムイオン電池(All-Solid-State Li-Ion Battery, ASS-LIB)は,安定性・長寿命性を有するリチウムイオン電池の次世代電池として精力的に研究開発が進められている. 硫化物系の固体電解質は高い成型性, イオン伝導性を持ちASS-LIBの有力候補である. しかし, 酸化物正極との接合界面には大きな界面抵抗が観測され, ASS-LIBの実用には界面抵抗低減が必要である. 本研究では正極/硫化物電解質の界面構造を第一原理計算から求め, 界面抵抗の原因と考えられている性質を調べる. ASS-LIB中のコバルト酸リチウム(LCO)/硫化物電解質界面は充放電を繰り返すことで電解質界面近傍にCo元素が流出・拡散しており, このような遷移金属元素の移動がリチウムイオン伝導度, 正極の容量劣化, 電池寿命に悪影響を及ぼすと考えられる. 本研究は第一原理計算より得たLCO/チオリン酸リチウム界面(β-Li3PS4, LPS)の構造を用いて界面付近の遷移金属元素の拡散の解析を行った. Coの拡散としてCoと他の正イオンが置き換わっていく機構を素過程とし, CoとLiまたはPを交換させた際のエネルギー差(交換欠陥の形成エネルギー)でCoの拡散しやすさを見積もった. 結果, LCO/LPS界面ではCoとPの交換がエネルギー的に安定であることが示された. さらに緩衝層の存在によってこのCo-Pの交換が抑制されることも確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度と次年度は全固体電池中の正極/硫化物電解質の遷移金属元素の拡散に着目し, LCO/LPS界面を用いて界面付近のCo元素の拡散の解析を行った. Coの拡散としてCoと他の正イオンが置き換わっていく機構を扱い, Coと他の正イオンの交換エネルギーでCoの拡散しやすさを見積もった. 結果, LCO/LPS界面ではCoとPの交換がエネルギー的に安定であり, 実験で観測されたCoの拡散はCoとPのmixingによって起 きていると推測された. さらに緩衝層の存在によってCo-Pの交換が抑制されることが示され, 実験の観測結果とよく一致する結果が得られた. 以上のように概ね研究計画通りに進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は代表的な正極物質であるコバルト酸リチウムのCo元素をAl置換した活物質を用いた全固体電池の界面抵抗が改善される現象について, 第一原理計算を用いた解析を行う. またリチウムイオン電池の電極/電解液界面の電荷移動抵抗現象に関して解析を行うことで, 全固体電池の界面で起きている電荷移動に関する知見を得る予定である.
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Causes of Carryover |
(理由) 2017年度にレーザーポインター等を購入予定であったが見積書等の作成が年度内に間に合わなかったため, 未使用額が生じた. (使用計画) 未使用額は次年度の物品購入に充てる.
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