2018 Fiscal Year Research-status Report
第一原理計算による全固体リチウムイオン電池の正極/電解質界面の研究
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16K17969
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
春山 潤 東京大学, 物性研究所, 助教 (80772003)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電荷移動反応 / 電極/電解液界面 / 第一原理計算 / グラファイト |
Outline of Annual Research Achievements |
蓄電池材料の高い出力特性を実現するには内部抵抗を低減する必要がある. 主要な抵抗成分は電極/電解質界面に起因する. 従って界面近傍でのイオン拡散をスムーズに起こさせるような材料設計には電極/電解質界面の反応の理解が必要不可欠である. 昨年度の実績としてLiイオン電池(LIB)におけるグラファイト電極/EC溶液界面の電荷移動反応の解析を行なった. 密度汎関数理論を用いた有効遮蔽媒質(ESM)法と溶液理論におけるReference Interaction Site Model (RISM)を組み合わせ(ESM-RISM法), 電極/電解液界面の電荷移動過程に適用した.すなわち, 電極と反応化学種の電子状態はESM法による量子力学(QM)計算で, 電解液はRISMによる古典的な分布関数で扱う近似を導入した. 電極・電解液はグラファイト(LixC6)・1 M LiPF6 EC溶液をそれぞれ扱った. 今回計算した LiC12 | 1 M LiPF6 EC界面とLiイオンの挿入・脱離反応として仮定したLi移動経路に沿って電子の化学ポテンシャルを一定に保つようにESM-RISM計算を行った. 反応の始状態と終状態の間で電子数の変化はほぼ1となり, Li挿入・脱離反応は電荷移動過程であることを確認した. さらに電荷移動過程の平衡電位での反応プロファイルの活性化障壁は0.59 eVと求められ, 実験により得られた値(0.5-0.6 eV程度)とよく一致した. 以上の内容は次の論文にまとめて出版した. J. Haruyama, T. Ikeshoji, and M. Otani, J. Phys. Chem. C 122, 9804 (2018).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度と次年度は全固体電池中の正極/硫化物電解質の元素拡散に着目し解析を行った. 昨年度は電極/電解質界面の電荷移動反応を理解するために密度汎関数理論と溶液理論を組み合わせた方法を用いてグラファイト/電解液界面のLi脱挿入のシミュレーションを行った. 反応の活性化エネルギーは0.59 eVと求められ, 実験により得られた値(0.5-0.6 eV程度)とよく一致した. 以上のように当初の研究計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はリチウムイオン電池の電極/電解液界面の電荷移動抵抗現象に関して不動態皮膜を含めた解析を行うことで, 電極/不動態皮膜/電解液でどのように電荷移動が起きているかを検証する. またその知見を全固体電池の界面で起きている電荷移動に適用し界面抵抗を低減するための提案を行う予定である.
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Causes of Carryover |
未使用額316円は物品費などに割り当てることが困難であった。この額は少額であるため翌年度の助成金の使用計画に変更はない。
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