2017 Fiscal Year Research-status Report
形状記憶合金の機能劣化抑制技術および布状アクチュエータ制御システムの構築
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16K17982
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
長 弘基 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (00435421)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 形状記憶合金 / 機能劣化特性 / アクチュエータ / 動作特性 / 屈曲動作 |
Outline of Annual Research Achievements |
形状記憶合金(SMA)は通電によるアクチュエータ素子として広く応用がなされているが、その出力は低く応用例は非常に限られている。またSMA素子は繰り返し使用により機能劣化が起こるため、製品寿命が比較的短いという欠点を持つ。本研究ではSMAアクチュエータの高出力化と利便性向上を目指し、SMAの機能劣化抑制技術の構築と、SMA細線を編むことにより作製したSMAメッシュ素子を用いた布状のアクチュエータ「SMAメッシュアクチュエータ」を作製し、その特性評価を行う。 昨年度は使用時に内部応力(付与ひずみ量)を発生させる形状記憶処理を施したSMA材に対し熱-冷却・負荷-除荷サイクルにより機能劣化特性を調べた。その結果内部応力の増加にともない機能劣化特性が向上することがわかった。本研究では機能劣化抑制のために最適な付与ひずみ量を調べた。その結果、付与ひずみが0.7%の場合が最も機能劣化が少なくなることを明らかにした。 また、昨年度使用した、複数のSMA線を編むことにより作製したSMAメッシュ素子の問題点である「位置保持制御が困難である」という点の改善のため、新たに1本のSMA線を織物の緯糸状に配置させた「緯糸型SMAアクチュエータ」を開発、このアクチュエータの動作特性におよぼす設置アルマイト線の本数について調べた。その結果、アルマイト線の増加にともない冷却効率と摩擦抵抗が増加するため、動作特性がこの両者の効果により大きく変動することを明らかにした。 さらに、この緯糸型SMAメッシュアクチュエータとバイメタルの原理を用いることで「屈曲動作SMAアクチュエータ」を考案、試作した。その結果、今までにない屈曲動作を可能としたSMAアクチュエータの開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は当初予定していた「機能劣化抑制技術の構築」の完了と、布状SMAアクチュエータの特性評価を目標としていた。 その結果、機能劣化に最適な付与ひずみ量(形状記憶処理の形状)が0.7%であることを明らかにした。またSMAメッシュアクチュエータの動作特性におよぼすアルマイト線の効果について明らかにし、さらに平成30年度に予定していた「屈曲動作アクチュエータ」の開発に成功した。 上記の研究成果については学会発表、論文発表を順次行っており、平成30年度に開催される学会にてさらに研究成果の発表を行う予定である。 以上の理由により、研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、新たに開発した布状SMAアクチュエータである「緯糸型SMAアクチュエータ」および「屈曲動作SMAアクチュエータ」のさらなる性能向上のため、両アクチュエータの動作特性におよぼす構造最適化のための研究を行う。 具体的には、アクチュエータ素子へのアルマイト線の設置状況(編み込み方法)が動作特性におよぼす影響について調べることで、緯糸型SMAアクチュエータ素子におけるアルマイト線設置状況の最適化を行う。また、平成29年度に開発した屈曲動作SMAアクチュエータは、屈曲動作自体は可能であるが、その屈曲率は実用化には遠い性能であるため、屈曲率を増加させるため、アクチュエータ構造の最適化を行う。 平成29年度は、当初予定していたSMAメッシュ素子の形状を平成28年度における研究にて変更する必要を生じていたため、新たに製作したSMAメッシュ素子にて研究を行った。そのため計画に一部変更が生じたが、当初目標としていた屈曲動作可能なSMAアクチュエータの開発に成功したため、計画の変更は成功であったと考えられる。 また平成30年度は本研究の最終年度であるため、上記した研究のとりまとめを行い、積極的に国内・国際学会にて発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
試作するアクチュエータに若干の仕様変更が生じ、アクチュエータ製作に必要な形状記憶材料の購入費、およびアクチュエータ製作費に差異が生じたため。これらの差額は本年度新たに試作するアクチュエータ製作、および試作するアクチュエータの制御のためのプログラム製作のために必要となる。
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Research Products
(14 results)