2016 Fiscal Year Research-status Report
摩擦を活かした新規微細加工法に対し材料表面が与える影響の解明およびその応用
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16K17996
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
内藤 圭史 岐阜大学, 工学部, 助教 (50759339)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スティック・スリップ現象 / 微細加工 / 微細周期構造 / 表面状態 / 導電性フィルム / 異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,スティック・スリップ現象を活用した独自の加工法(SS 加工法)を如何なる材料表面にも適用可能とすることを目的に,“表面状態”と“SS 加工によるナノ周期構造”の関係解明を目指すものであり,「①ナノ周期で金属層を持つフィルムの開発とその特性評価」および「②ナノ周期構造を有する繊維の開発とその特性評価」の2つのテーマから成る. 初年度,①に関しては,真空蒸着法とSS加工を活用し,周期こそ数千ナノメートルと目標より長かったものの,周期的に金属(銅)層を持つポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを得ることに成功した.また,表面の材料種が周期構造の形成に及ぼす影響を明らかにするために,銅を表面に蒸着したPETフィルム(Cu/PETフィルム)と無蒸着のPETフィルムの両方にSS加工を施して実験を行ったところ,加工条件が同一であれば,試料表面層が金属の場合の方が,SS加工により形成される構造の周期が長くなることが明らかとなった.加えて,SS加工が施されたCu/PETフィルム表面は導電性を有し,異方導電性を発揮する可能性を示した. 次に,②に関しては,まずポリプロピレン(PP)単繊維に周期構造を形成可能な加工条件を検討した.その結果,周期は目標よりも長かったものの,周期構造を有する繊維を恒常的に作製できる加工条件を見出した.また,周期構造の形成機構を明らかにするために,SS加工されたPP単繊維を電子顕微鏡によって観察・評価した結果,繊維と加工刃との接触面ではアブレシブ摩耗が起こっていることが分かった.加えて,SSはアブレシブ摩耗により試料表面が削りとられる過程で起こり,切削により新たに生まれた表面上に周期構造が形成されていることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記①に関しては,まず周期的に金属層を持つフィルムの作製に成功した.加えて,試料表面の材料種の違いがSS加工により形成される周期構造に与える影響について調べ,表面がPETよりも金属(Cu)の場合の方が,形成される構造の周期が長くなることを明らかにした.但し,現状で形成できている構造の周期は数マイクロメートル以上であり,構造のナノ周期化という目標は未達である.一方,SS加工を施したCu/PETフィルムは,確率こそ低いものの異方導電性を発揮する領域を有し,異方導電性フィルムとしての可能性を示した.上記②に関しては,周期構造を有するフィルムの作製には成功したが,その周期は十マイクロメートル以上と広く,構造色の発現を現状では確認できていない.また,力学特性に関しては,高速試験時に思わぬ結果の乱れを生じたため,実験方法を再検討中である.一方で,周期構造が繊維に形成される機構の解明については次年度に実施予定であったが,本年度に先行して実施することが出来た.以上より,本研究は概ね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度,上記①に関しては,皮膜する金属を銅よりも弾性率の低い銀に変更し,今年度と同様の評価を行うことにより,試料表面の材料物性がSS加工により形成される構造の周期に与える影響を調べる.さらに,作成した試料がぬれに対して異方性を示すか否かについても調査を試みる.また,上記②に関しては,まず早期に引張試験方法を再検討し,周期構造を有する繊維の力学特性を調べる.加えて,①では表面物性に注目しているが,②では表面形態に着眼し,試料の表面形態がSS加工により形成される構造の周期に与える影響を調べる.つまり,円形断面を持つ繊維と長方形断面を持つフィルムでは,形成される周期構造の形態に差が生まれるのかについて調査を行う.
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Causes of Carryover |
研究に必要な機器の一部は,本学の共通利用機器であり,利用料を支払って機器を使用している.今年度は利用料の最終請求額が当初見積もっていた金額よりも少なかったため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も走査型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡を頻繁に使用する.そのため,今年度の残額(次年度使用額)は次年度の共通機器の利用料として使用する計画である.
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Research Products
(3 results)