2016 Fiscal Year Research-status Report
電気毛管力により駆動される表面張力流を利用した界面挙動の制御
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16K18011
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
矢野 大志 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 助教 (50768679)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 表面張力流 / 界面張力 / 電気毛管現象 / 液膜 / 液滴 / PIV |
Outline of Annual Research Achievements |
流体の表面張力あるいは界面張力の大きさは温度・濃度・電位などに依存することが知られており,これらの不均一分布によって生じる流れに関する研究が多く行われている.本研究では,電気毛管現象により液体の表面張力を変化させ,それによって生じる流れについて実験を行った.平成28年度の研究では以下のような知見が得られた. (1)シリコーンオイルと炭酸ナトリウム水溶液の油水液膜の界面を挟んで電極を配置し,そこに電圧を印加することで対流が生じることを確認した.この対流について可視化用のトレーサ粒子を高速度カメラで撮影し,PIV解析を行うことで速度分布の計測を行った.本実験では矩形と円形の電極を用いて実験を行ったが,円形の電極を用いた実験では定常的な非軸対称流が生じ,温度や濃度勾配によって駆動される流れとは異なる性質を有していることが確認された. (2)印加電圧の影響を把握するため,ADSA(Axisymmetric Drop Shape Analysis)法を用いて界面張力の大きさを計測した.その結果,印加電圧の増大に伴い界面張力が大きくなることが確認された. (3)円形のディスクを用いて形成された懸下液滴において,温度差表面張力流が電圧印加によって抑制されることを確認した.作動流体には高粘性のシリコーンオイルを使用し,気液界面に温度勾配を与えることで温度差表面張力流を誘起したあと,気液界面の電荷分布が不均一になるように電圧(最大1kV)を印加したところ,流れが急激に遅くなる現象を観察した.また,電圧の印加を停止すると再び流速が増加し,電圧印加による表面張力流の制御の効果を確認することができた. 以上の研究成果から,電圧印加によって表面張力を変化させ流れを制御できる可能性が示唆された.しかしながら,電場と表面張力の関係には未解決な問題も多いため,引き続き研究を進める必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究目標は(1)印加電圧が界面張力の大きさに与える影響の調査,(2)実験装置の構築,(3)速度場の可視化計測,(4)電気毛管力駆動の表面張力流の定式化,であり以下のような成果から,研究はおおむね順調に進展したと言える. (1)について,炭酸ナトリウム水溶液中に形成したシリコーンオイル液滴をカメラで撮影し,その形状と理論式から得られる液滴形状を比較することで界面張力を計測した(ADSA法).その結果,印加電圧を0Vから400Vまで変化させたときに界面張力が約15%(1mN/m)上昇することが確認された. (2)シリコーンオイルと炭酸ナトリウム水溶液の油水液膜での実験およびシリコーンオイル液滴の実験を行うための装置を構築した.油水液膜での実験においては矩形と円形の電極を用いて実験を行った.また,シリコーンオイル液滴での実験では温度差駆動の表面張力流との相互作用に関する調査を行うために,温度制御の機能を付加した実験装置を構築した. (3)シリコーンオイルと炭酸ナトリウム水溶液の油水液膜内に生じた電気毛管力駆動の界面張力流の速度分布をPIVで計測した.シリコーンオイルは絶縁性が高いため,導電性付与剤を添加することで電気毛管効果が強くなり,流速が大きくなることが確認された.また,印加電圧を大きくすることで流速が大きくなることも確認された.円形電極を用いた実験では,軸対称の流れの発生を予想していたが,生じた流れは予想に反して複数の渦構造を有する非軸対称なものであり,このような流れが生じた原因については今後も調査を継続する. (4)電気毛管現象により生じる流れの数値解析を行うため現象の定式化に取り組んだが,この目標については未達成である.単純な形状については電場分布の計算が可能となり,この課題には今後も取り組んでいく.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究では,(1)電気毛管力により駆動される表面張力流の数値解析と(2)界面挙動の制御に重点を置いて研究に取り組む. (1)数値解析については平成28年度の目標であったが,現象を完全に定式化するに至っておらず引き続き取り組みを行う.解析には汎用の数値流体解析ソフトを使用する計画であり,その準備を既に進めている. (2)電気毛効果により温度差駆動表面張力流が抑制される現象は,シリコーンオイルの懸下液滴を用いた実験により確認することができた.しかし,現象を完全に解明するには至っていないため,実験装置をより精緻化し,パラメータを様々に変化させながら実験を行う.また,速度場のみならず温度場の計測も行い,現象の把握に努める.それらのデータを参考に,温度差駆動表面張力流および界面挙動を制御するための実験を行う計画である.また,温度差駆動表面張力流との関係性を知るために,温度差のみによって駆動される表面張力流についても研究を行う. 本研究で最も重要な点は対流が電気毛管効果により駆動されていることを証明することである.実験を行う際,液体内の温度分布が不均一であると重力に起因する浮力・表面張力の温度依存性によって流れが生じてしまう.このような流れと電気毛管効果によって生じる流れを区別するために,温度差駆動表面張力流と電気毛管力駆動表面張力流の関係に注目しながら研究を行っていく.電気毛管力により界面挙動を制御することで,表面張力が支配的となるマイクロスケール流れの研究などに大いに貢献することが期待される.
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[Presentation] Characteristics of dynamic surface deformation oscillatory Marangoni convection in liquid bridge2016
Author(s)
Ryosuke Seki, Yutaro Isonishi, Taishi Yano, Koichi Nishino, Yasuhiro Kamotani, Satoshi Matsumoto, Ichiro Ueno, Atsuki Komiya, Masahiro Kawaji, Nobuyuki Imaishi
Organizer
11th Asian Microgravity Symposium
Place of Presentation
Hokkaido, Japan
Year and Date
2016-10-25 – 2016-10-29
Int'l Joint Research
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