2016 Fiscal Year Research-status Report
多成分混合気体の非定常な弱い蒸発・凝縮に関する分子気体力学解析
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16K18016
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲葉 匡司 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00648511)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子気体力学 / Boltzmann方程式 / 蒸発 / 凝縮 / 多成分混合気体 / 音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
非定常な弱い蒸発・凝縮をともなう多成分混合気体の振る舞いを、分子気体力学にもとづいた理論および数値解析により明らかにすることを目的とし、平成28年度は単原子分子の混合気体に対するモデルBoltzmann方程式(S. Brull, Commun. Math. Sci., 2015)の境界値問題をKnudsen数(気体分子の平均自由行程と代表長さの比)が1に比べて十分小さい場合の漸近解析(線形理論)を行い、気液界面で蒸発・凝縮をともなう非定常な多成分混合気体の流れを記述するための理論の構築を行った。結果として、気液界面から十分離れた領域では、線形化されたEuler方程式系および境界近傍に形成される振動・温度境界層に対する方程式系が得られた。すなわち、大部分の領域における気体の振る舞いは、流体力学的方程式系によって支配されることがわかった。さらに、気液界面のごく近傍(分子の平均自由行程程度の領域)に形成される気体論境界層(Knudsen層)を数値的に解析することによって、流体力学的方程式系に対するすべりの境界条件がすべり係数を含む形で得られた。 非定常な弱い蒸発・凝縮をともなう混合気体の流れの実例として、音波によって誘起される蒸発・凝縮を考え、得られた流体力学的方程式系および境界条件を用いた解析により、非凝縮性気体の数密度が凝縮性気体に比べて十分小さい場合に気液界面で蒸発・凝縮が誘起されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
音波によって誘起される多成分混合気体の弱い非定常蒸発・凝縮現象を数値的に取り扱うため、モデルBoltzmann方程式の差分法を用いた数値計算方法の構築を行う。数値解と平成28年度で得られた漸近解を比較し、本解析の妥当性を検証・実証する。さらに、気液界面近傍に形成される気体論境界層(Knudsen層)内の非定常な混合気体の振る舞いを数値的に詳細に解析し、混合気体が非定常蒸発・凝縮流れに及ぼす影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究課題をより効果的に遂行・進展させるため、次年度へ繰り越す。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果公表のための諸経費や計算機の購入費用に充てる。
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