2017 Fiscal Year Research-status Report
輸血適合試験の自動化に向けた誘電泳動と気液二相流による粒子操作手法の開発
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16K18033
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山本 憲 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (70749100)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ混相流 / 界面 / 血液 / 希釈 / 混合促進 / コロイド溶液 / 気泡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は本研究課題の2年目であり、平成28年度に得られた基礎的な知見を基に、混合・希釈の対象である液体に対して混ざり合わない(イミシブルな)流体を様々な条件で混入させた場合の混合・希釈現象を実験的に明らかにした。なお、実験では混合・希釈対象として拡散係数の大きく異なる(すなわち、現象が大きく異なると予想される)、色素および粒子を使用し、イミシブルな流体としてはオレイン酸および空気を使用した。これらの条件において混合・希釈特性を十分に把握した後に、血液を用いた混合・希釈実験を行い、これまでの実験との差異は見られたものの混合・希釈の有効性を確認した。以下に、各実施項目の詳細を記す。 混合・希釈における拡散係数の影響:本研究で開発したマイクロ流体デバイスでは、混合・希釈する2液体とイミシブルな流体が合流部において接触する。本年度は、合流する2液体の流速、イミシブルな流体が合流する頻度(周波数)および流量、合流部の形状を変化させて実験を行った。これらの実験より、イミシブルな流体が合流する頻度が高く、合流部におけるイミシブルな流体の占有率が高いほど混合・希釈が促進し、また、混合・希釈の促進は合流部において顕著であることが明らかになった。これに対して、流速や混合部の形状は混合・希釈に影響を与えないことも明らかになった。さらに、これらの効果は拡散係数の大きく異なる物質を用いた場合にも同様に得られることが明らかになった。 血液を用いた混合・希釈実験:血液は、これまで使用していた水をベースとしていた液体と比較して粘度が高く、また赤血球は生きた細胞であるという違いがある。実験により、血液を用いた場合にもこれまでと同様に混合・希釈効果を得ることができたが、イミシブルな流体にオレイン酸を使用した場合にはオレイン酸と血液の反応により不具合が生じることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本手法が混合・希釈を促進することは既に前年度に明らかにされているが、本年度の実験により、流動条件等が促進効果にどのような影響を与えるのかを体系的に理解することができた。さらに、血液を使用した実験を行うことにより、これまでに確立した手法は血液の場合にも有効であることを確認した一方で、イミシブルな流体は血液との相性が良い流体である必要性が明らかになった。これらの結果を受け、イミシブルな液体に空気を用いた実験を行うことでこの問題を解決し、さらには混合・希釈後の血液の試薬との反応に関しても予備的な実験を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した手法により血液の混合・希釈の促進が可能であることが示されたため、最終年度となる平成30年度には、反応の検出まで含めたマイクロ流体デバイスの開発を行う。具体的には、混合・希釈促進後のイミシブルな流体の分離および試薬との反応手法、さらに反応の光学的な検出手法の検討・開発を行っていく。 イミシブルな流体の分離に関しては、マイクロ流体デバイスを適切に設計することによりデバイス内の圧力分布を調整し、イミシブルな流体のみ分離する手法を検討する。また、試薬との反応に関しては、反応と検出の手法を同時に検討する予定である。反応に関してはデバイス形状による効率的な反応を目指し、検出に関しては、反応により赤血球同士が結合して塊になることを利用してこれらの塊をトラップする機構を考案する。最後に、トラップした塊を光学的に検出する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度に購入を予定していた高速度カメラ(金額:2,000千円)の予算不足により購入した代替品(金額:950千円)との間に生じた差額がほぼそのまま次年度使用額として計上されている。
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Research Products
(2 results)