2016 Fiscal Year Research-status Report
磁気浮上・流体機械システム融合による小児用人工心臓用磁気浮上モータの超小型化
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16K18036
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
長 真啓 茨城大学, 工学部, 助教 (30735105)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 磁気浮上モータ / 5軸制御 / 小児用人工心臓 / 遠心血液ポンプ / 流体粘性減衰 / 流体力 / 小型化 |
Outline of Annual Research Achievements |
数値流体解析を用いて,外径22 mm ,高さ33 mm の5 軸制御磁気浮上モータに組み込み可能,かつ100 mmHg の揚程に対して0.1~2.5 L/min の範囲で流量調節可能な遠心血液ポンプの設計を行った.数値流体解析では圧力分布,流速分布,せん断応力も検討項目として詳細に評価した.血液適合性に関して,乳幼児期の患者の血液循環量は小さいため血液ポンプ内に血液が鬱滞する時間が長く血栓形成の恐れがある.また,青年期に補助流量を増加させるためにインペラを高速回転させるため,高せん断応力により血球破壊を引き起こす可能性がある.このため,血液鬱滞時間を短縮するためにポンプ内血液充填量を小さくとり,高せん断応力の発生を抑制するために血液流路を広くとるようにポンプ室を設計した.小型血液ポンプを製作して磁気浮上モータと組み合わせ,模擬循環閉回路へ接続してポンプ性能を評価した.ポンプ駆動回転数を4000~5000 rpmに変化させることで目標流量を発生可能であることを確認した. ポンプ内流体力と粘性ダンピングをインペラ支持へ積極的に活用することを視野に入れ,磁気浮上システムと血液ポンプを融合した浮上ロータダイナミクス理論を構築する.本ダイナミクスモデルでは,磁気浮上システムの磁気吸引力によるばね剛性(負ばね力,受動安定性)と5 軸能動制御によりモータが発生する磁気支持力に加え,流体機械融合により生じるポンプ内流体力,流体粘性ダンピングを考慮する.磁気浮上システムのばね剛性,モータ発生磁気支持力については,既に計測済みである磁気浮上モータの磁気吸引力静特性の結果を活用してモデル化を行う.ポンプ内流体力,流体粘弾性については,小児用人工心臓の種々の動作点における流体シミュレーション結果をもとに基礎モデルを構築する.磁気浮上モータの発生磁気支持力静特性からポンプ駆動時の流体力を推定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は,既開発の小型5軸制御磁気浮上モータ専用の遠心血液ポンプの設計,製作,評価,およびポンプ駆動時のインペラ支持特性から磁気浮上人工心臓の運動モデル構築を目的として研究を行った.本目標に対して,概要に記載した通りの以下の内容まで研究を進めた. ①数値流体解析を用いてポンプ特性の推定,ポンプ内流体力や圧力,流速分布を評価しながら小型遠心血液ポンプを設計した.設計したポンプを製作して小児用磁気浮上人工心臓試験機を構築し,模擬循環閉回路を用いてポンプ特性および磁気浮上性能の評価を明らかにした.また,磁気浮上モータの磁気支持力静特性からポンプ駆動時に浮上インペラに働く流体力を推定した. ②5軸制御磁気浮上モータの静特性から発生磁気支持力,負ばね力をモデル化し,数値流体解析および実機実験から推定した流体力影響をモデル化した. ①,②より,磁気浮上人工心臓の運動モデルの構築,精度検証までは未完であるが,概ね研究目標を満足した成果を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度に開発した小児用人工心臓試験機を用いて,ポンプ駆動時の流体力変動の推定,磁気浮上モータの周波数応答測定,振動特性を活用した流体粘性推定を行い,運動モデルの高度化を図る.本知見をもとに構築した運動モデルを用いたダイナミクス解析を実施し,磁気浮上システムの受動安定性とポンプ内流体力の関係,粘性ダンピングによる振動抑制特性を解明する.得られた知見をもとに磁気浮上モータと血液ポンプの融合による5 軸制御磁気浮上モータ小型化の可能性について追及し,小児用人工心臓をどこまで小型化できるか見通しを立てる.
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Causes of Carryover |
申請では,血液ポンプ製作費の中に永久磁石,ロータ用磁性体を計上していたが,該当する部品につて既存のモータ部品を流用して磁気浮上ポンプの製作を行った.この分の経費が余ったため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
加振機を使用した振動実験を行うために,磁気浮上ポンプと加振機を連結するための治具が必要である.また,H28年度の実験結果を踏まえてモータの軽微な改良を行う予定も出てきている.上記を使途に次年度に繰り越した経費を使用する予定である.
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