2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代MRI/NMR用無絶縁高温超伝導コイルのためのクエンチ検出と保護技術の開発
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16K18068
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
王 韜 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), その他(招聘研究員) (60707818)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ピックアップコイル / クエンチ検出 / 保護 / PEECー熱ー磁場の連成解析 / 無絶縁高温超伝導コイル |
Outline of Annual Research Achievements |
高温超伝導コイルの高信頼化を達成するために,コイル自身の高熱的安定性化が不可欠となる同時に,適切な保護手段でクエンチ・焼損を防ぐ必要がある。そのため,運転中の高温超伝導コイルで常伝導転移を検出した直後に,速やかにコイルの遮断を行いコイルに蓄えられた電磁エネルギーを安全に引き出すことが要求される。しかし,常伝導転移の検出およびコイル保護方法は,従来の高温超伝導コイルにとって大きな課題である。そこで,本研究では,以下の課題について検討した。 1)常伝導転移検出方法の設計:以前の研究で開発された部分要素等価回路に基づいた回路解析,有限要素法に基づいた温度分布解析およびビオ・サバール方に基づいた磁場解析の3つを連成した数値解析により,無絶縁コイルの常伝導転移時における特異的な電流分布を再現し,局所的電流分布の変化による常伝導転移時の局所的磁束変化を解析した。その解析結果に基づいて今回は局所的常伝導転移を検出できるピックアップコイルの構造を設計できるようになった。また,小型無絶縁コイルによる検証実験により,ピックアップコイルによる常伝導転移検出が極めて有効であることが確認された。 2)3-TMRI用m級大口径無絶縁コイル保護方法の設計:今回はPEECと熱の連成解析を用いて,m級大口径無絶縁コイルに蓄える電磁的エネルギーを回収できる外部抵抗値の区間について解析した。また,算出した抵抗値の区間を持った可変電気抵抗を使用することにより,可変抵抗値は無絶縁コイルの電源遮断時における磁場減衰時定数を制御できるようになった。このような可動的保護手法は,複数なコイルで積層したコイルシステムにある一個の子コイルが故障で電源遮断を行った場合,周りの子コイルを瞬的な磁束変化によるクエンチ波及効果を最大限に抑制することができると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,以前の研究で開発されたPEEC-熱の連成解析に,ビオ・サバールに基づいた磁場解析との連成を達成し,無絶縁コイルの局所的常伝導転移を検出するピックアップコイルの構造設計をできる数値解析コードを確立した。その解析コードにより,常伝導転移を検出できる円形ピックアップコイル,および常伝導転移部の位置を特定できるスキャニングピックアップコイルの設計ができるようになった。そして,常伝導転移時にピックアップコイルの電圧感度についても解析で調べた。 また,PEEC-熱の連成解析により,電源遮断時のMRI用m級大口径無絶縁コイルの蓄蔵エネルギーを安全回収できる外部保護抵抗の設計および保護抵抗値の可変区間について検討した。結果として,可変保護抵抗値は,無絶縁コイルの電源遮断時における磁場減衰時定数を制御することが可能であるとわかった。そして,可変保護抵抗値と電源遮断時の無絶縁コイルの両端電圧との関係を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後以下のように進めていく。1)常伝導転移発生した場合,無絶縁コイルの局所的巻線の臨界電流減衰時定数(局所的クエンチ事故の有り様)と昨年度設計したピックアップコイルの検出電圧の関係を解明する;2)一時的な熱擾乱(例え100ms)が無絶縁コイルの基礎的特性に対する影響評価。その中,熱擾乱の熱エネルギーが無絶縁コイルの熱暴走に及ぼすか否か,熱擾乱後にコイルが熱暴走あるいは状態復帰の場合それぞれのクエンチ検出電圧について検討する;3)無絶縁コイルの熱暴走傾向が検出された場合,コイルの電源遮断を行う必要がある。そこで,昨年度設計した可変外部保護抵抗により,遮断時無絶縁コイルの磁場減衰時定数を制御した場合,磁場減衰時定数と保護抵抗値の依存関係を明らかにする;4)積層無絶縁コイルシステムにある子コイルが常伝導転移事故による緊急電源遮断された時,保護抵抗値に制御された子コイルの磁場減衰特性が周りのコイルに与える影響を明らかにする;5)各子コイルの可変保護抵抗値の最適分配に関する智能化アルゴリズムを確立し,電源遮断を行った一つのコイルの瞬時な磁束変化によるクエンチ波及効果を最小化にする方策を探る。以上の研究計画を達成すれば,将来的にMRIやサイクロトロン用主コイルシステムは,故障時にコイルシステムの全体を遮断せずに故障した子コイルのみ取替することができる。メンテナンスの飛躍的な効率向上に極めて積極的な意味を持つ。
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Causes of Carryover |
為替レートの急激変化により,本来計画した高温超伝導線材の量が買い貯めることが困難になった。そのため,その分の経費をレートがもっと有利な今年度に繰越して,線材購入を行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験用の高温超伝導線材の購入,コイルの製作料,および周辺諸材料の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)