2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K18088
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
武居 淳 お茶の水女子大学, ソフトマター教育研究センター, 特任助教 (70726794)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微細加工 / 切り紙 / ストレッチャブル / ディスプレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、目標とするストレッチャブルディスプレイを実現するために切り紙構造を用いる。切り紙構造とはシート状の素材に切り込みを入れ、変形を加えることでシートを面外変形させること得られる三次元構造のことである。この方法を使い、マイクロスケールの三次元構造を作り、そこに機能性流体を配置することでフレキシブルデバイスとしての機能を持たせる。 本年度は、原理検証のためにセンチメートルスケールでの切り紙構造を作るための製造プロセスの確立、およびマイクロスケールでの切り紙構造を作るために微細加工プロセスの模索を行った。一般的に微細加工を用いたデバイスの製作には時間がかかるため、原理検証を効率的に行うには手でハンドリングできるスケール(センチメートルスケール)での実験が必要になる。申請者はカッティングマシンやレーザーカッターを用いて、紙およびゴムシートに切り込みを入れセンチメートルスケールの切り紙構造を試作する方法を確立した。また、申請者が所属するお茶の水女子大学ソフトマター教育研究センターには微細加工設備がないため、共同微細加工設備「東京大学超微細リソグラフィー・ナノ計測拠点」にてリソグラフィなどの微細加工を行う環境を整えた。 微細加工を用いて基板上にマイクロメートル厚の有機膜を成膜した後、表面にリソグラフィを使い保護膜をパターニングし、プラズマ処理を施すことで有機膜の一部を焼き切り数百マイクロメートルの切れ込みを持つ切り紙構造を作ることに成功した。また、得られた切り紙構造が持つ空間内にシリコンオイルを配置することに成功し、さらに化学気相成長(CVD)プロセスを使いシリコンオイル表面に有機膜を成膜し封止することに成功した。 本年度の研究において、フレキシブルディスプレイを実現する上で必要なマイクロスケールの切り紙構造の製作、切り紙構造に液体配置した構造を作るための要素技術を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画において、初年度は原理検証を中心に行うことを予定していた。切り紙構造のセンチメートルスケールおよびマイクロメートルスケールで製作するためのプロセスを確立することができた。センチメートルスケールの切り紙構造はカッティングマシンやレーザーカッターを用いて、マイクロメートルスケールの切り紙構造はリソグラフィなどの微細加工技術を用いて製作する手順を確立した。 また、本研究ではマイクロスケールの切り紙構造と機能性流体を接触させることを想定している。先行研究においてマイクロスケールで液体が微小構造に接触した場合、液体の表面張力により微小構造が変形することが知られている。ただし、本研究においてマイクロスケール厚の切り紙構造を作り、内部の空間に液体(シリコンオイル)を注入しても切り紙構造は変形しないことが確認できた。この切り紙構造の液体に対するロバストネスは、構造の曲げエネルギーと液体の表面自由エネルギーを比較することで理論的に検証することができた。 研究計画において目標としていたマイクロスケールで切り紙構造を製作するための要素技術の確認と、液体を切り紙構造に配置した際のロバストネスの実験的・理論的な裏付けが取れた。 次年度は、これまでに得られた製作方法および理論的な設計指針をもとに、切り紙構造と機能性流体を使ったフレキシブルディスプレイの実現を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、目標とするフレキシブルディスプレイを実現するために切り紙構造を用いる。初年度においてマイクロスケールの切り紙構造の製作方法と、液体と接触させた際にも切り紙構造が変形しないことを実験的・理論的に確認した。 次年度は、切り紙構造の表面にリソグラフィを用いて配線のパターニングを行う。そして、電圧の印加に対し発色する機能性流体を用意し、切り紙構造に配置することでフレキシブルディスプレイを実現する。次年度は、まず比較的製作が容易なミリメートルスケールの切り紙構造を製作し、機能性流体と組み合わせた単色単一ピクセルの試作を行う。そして、ミリメートルスケールのデバイスの駆動電圧、分光分布、反応速度、フレキシビリティを計測する。その後、構造を数百マイクロメートルまで落とし、サイズダウンによる各種性能への影響を調べる。また、配線をパッシブマトリックス化し、複数のピクセルの個別制御や、複数の発色機能性流体を用いることで複数の色を表現できるフレキシブルディスプレイの実現を目指す。 初年度は原理検証を中心に研究を進めた。最終年度はこれまでの研究をもとにデバイスの製作・試験を行うとともに、研究成果をまとめ学会や論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
申請者が所属するお茶の水女子大学ソフトマター教育研究センターでは微細加工設備がないため、当初の研究計画では使用頻度の高い加工装置を購入する予定であった。しかし、所属施設が微細加工に関しての知識がなかったため、機器の設置場所や管理方法について説明する必要性が生じ、結果として購入手続きが遅れ装置を購入することはできなかった。初年度は、使用頻度が高いため多くの時間的ロスが生じたが、その機器を所有する外部設備を利用することで研究の加工に関する部分を進めた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述したように、初年度は使用頻度が高いにも関わらず所属施設に対する購入予定の機器の設置場所や管理方法について説明することに時間を要し、初年度中に購入することが出来なかった機器がある。最終年度は研究を効率的に進めるために初年度購入することができなかった微細加工装置を購入する予定である。
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