2017 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体を用いた酸化物半導体スティープスロープ・フレキシブル素子の創製
Project/Area Number |
16K18093
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
藤井 茉美 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (30731913)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸化物半導体 / イオン液体 / 多孔質膜 / 電界効果トランジスタ / 電気二重層トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はIGZO薄膜トランジスタにイオン液体ゲートを応用し,電気二重層トランジスタとしての高性能化および安定化を目指したものである.素子作製および信頼性の確認を行う過程で,IGZOとイオン液体界面における化学反応による劣化現象を発見した.この現象理解と改善手法を提案し,実施している. 具体的には,IGZO薄膜表面にイオン液体を滴下して放置すると,IGZO表面荒れが増加した.電子顕微鏡で観察したところ,表面が多孔質状に変化しており,一部の元素のみが腐食されたことが予想できた.そこで,X線光電子分光にとよる結合状態評価を行い,IGZO中の亜鉛が選択的に引き抜かれていることが明らかになった.この現象は,特に水分が多い環境およびフッ素の少ないイオン液体材料で顕著に現れることもわかった.フッ素の少ないイオン液体は,フッ素を多く含むイオン液体と比較して吸湿性が高く,イオン液体中に水を含むことが知られている.従って,これを抑制するための手法として,撥水性の自己組織化単分子膜をIGZO/イオン液体界面の層間膜として用いることを提案し,実施した.この結果,原子間力顕微鏡の表面粗さ評価およびX線光電子分光の結合状態評価より,IGZOの亜鉛減少に関わる腐食を抑制することに成功したと判断できた.しかしながら,この抑制効果は水分の少ない環境でのみ現れるため,さらなる改善が必要である. 一方で,視点をかえると,液体を滴下するだけで酸化物半導体を多孔質形状に加工できると言える.ここで副産物的に発見した多孔質膜の新たな機能性発現,素子応用発展についても検討していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大きく2点の理由が考えられる.1点目は,主たる研究者のライフイベントによる休暇および育児による研究時間の短縮が理由である.2点目は,副産物的に発見した多孔質形状の評価のため,当初の想定より研究内容,実験量が拡大したためである.
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Strategy for Future Research Activity |
実験量拡大に対応するため,本研究に従事する大学院生を新たに確保する.また,研究代表者は実験進捗の管理を主に行うことで研究時間の短縮による影響を無くす. 具体的な研究内容としては,IGZO/イオン液体界面の劣化現象を抑制することが第一課題である.このため,自己組織化単分子膜の評価および素子全体の保護膜の検討を進め,イオン液体および水分からの素子保護手法確立を行う.
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Causes of Carryover |
研究者は平成29年4月に育児休暇から復帰したが,産休以前と比べて研究時間が減少した.申請時にこのような状況を十分に予測できておらず,研究計画に遅れが生じていることにより,次年度使用額が生じている. 計画通りの水準に到達するよう研究を急ぐ中で,協力機関へ学生を出張させて実験を実施する回数を増やす予定である.そのため,物品費の一部を旅費に割り当てる.また,引き続き実験に使用する試薬,基板,実験用治具の購入に使用し,実験を円滑に進め,成果をまとめる. まとめた成果は国際学会発表および論文発表を行う予定であり,このための費用を支出する.
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Research Products
(11 results)