2017 Fiscal Year Research-status Report
半導体共鳴トンネルダイオードを用いたテラヘルツ送信器の設計理論の確立
Project/Area Number |
16K18095
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
浅川 澄人 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 助教 (80751792)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 共鳴トンネルダイオード / 広帯域アンテナ / 集積一体化 / テラヘルツ無線 / アレイ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで提案・理論解析・予測性能評価を行ってきた自己補対ボウタイアンテナ集積共鳴トンネルダイオードテラヘルツ送信器の試作・評価を行い、提案テラヘルツ送信器の設計理論の確立および無線通信応用のための実現条件を工学的に明らかにすることを目的としている。 研究計画として、平成29年度は、平成28年度研究課題(H28A:自己補対ボウタイアンテナ集積共鳴トンネルダイオード(RTD)テラヘルツ送信器の設計、H28B:抵抗結合型高出力テラヘルツ送信器の設計)で設計したデバイスの試作・評価を行う予定であった。具体的な内容に関して以下で説明する。 テラヘルツ送信器の試作(H28A)を行うにあたり、まず三重障壁共鳴トンネルダイオード(TBRTD)単体の試作を行った。試作は、研究協力先である情報通信研究機構(NICT)にて実施し、TBRTDの電流電圧(I-V)特性の特徴である微分負性抵抗(NDR)領域を室温下で観測可能なデバイスを作製することができた。 抵抗結合型高出力テラヘルツ送信器(H28B)に関しては、結合回路の設計および作製プロセスを検討した。結果として、提案結合回路では作製プロセスが複雑化してしまい、作製困難が予想された。そこで、送信器間を金属配線で行う結合回路構造を提案し、その理論解析(電磁界シミュレーションおよび時間領域大信号解析)を行った。新たに提案した構造では、3個以上の送信器結合が容易であり、電源回路も簡易化の可能性がある。理論解析の結果、電源電圧によって各送信器の同周波数・同位相での発振が可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テラヘルツ送信器の試作に関しては、TBRTD単体デバイスの作製までは完了しているが、プロセスの改善が必要である。しかしプロセスの改善が完了しさえすれば、速やかに送信器の試作は可能である。 抵抗結合型高出力テラヘルツ送信器の設計・試作に関しては、結合構造の見直しはあったものの、送信器の構成要素である外部回路と同時に作製可能な結合構造を有した高出力テラヘルツ送信器を新たに提案することができた。また提案構造の理論解析も完了しており、同周波数・同位相で発振可能な構造設計の指針を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、早期にプロセスの改善を行う。特に層間絶縁膜のドライエッチングプロセスに課題がある。このプロセス改善が完了したのち、速やかにTBRTD単体デバイスの作製・評価を行う。 テラヘルツ送信器および高出力テラヘルツ送信器の試作・評価に関しては、新たに提案した結合構造では同ウェハ上への同時プロセスが可能であるため、そのためのマスク設計・発注を9月上旬までには完了させ、9月中旬ごろからデバイス作製に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度予算の多くは試作用のものであった。しかし本年度の研究実施中に作製プロセスが簡易であり、拡張性のあるデバイス構造の提案と、実現可能性のための理論解析(電磁界シミュレーションおよび時間領域大信号解析)を主として実施した。そのため本年度は試作を実施せず、次年度使用額が生じた。 (次年度使用計画) 本年度の研究結果として、新たに提案したデバイス構造が実現可能であることが概ね判明した。そのため次年度は、本年度研究結果の論文投稿、デバイス構造の詳細な実現可能性を引き続き明らかにしていくこと、試作の実施の3点を計画している。主な使用計画としては、論文投稿料、作製に必要なフォトマスクの発注、状況によっては層間絶縁膜の購入、の3点である。フォトマスクの枚数に関しては、作製プロセスを現在検討中であり、おおよそ6枚程度であることを見積もっている。しかし作製プロセスの改善等により発注枚数が年度中に数回発生する可能性がある。また現在使用している層間絶縁膜に関して、エッチングプロセスの困難さが本年度明らかになりつつある。そのため層間絶縁膜を変更する可能性がある。
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