2017 Fiscal Year Research-status Report
ミリ波帯超高速ワイヤレス通信用オンチップ型広帯域フィルタリングアンテナの研究開発
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16K18101
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
大平 昌敬 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60463709)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アンテナ / フィルタ / フィルタリングアンテナ / マイクロ波 / ミリ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
広帯域フィルタリングアンテナ(フィルテナ)を実現すべく、本研究課題2年目の平成29年度はマイクロ波帯広帯域フィルテナの設計開発に注力し、以下の研究実績を上げた。 (I) マイクロ波帯広帯域フィルテナの設計開発:初年度に開発した広帯域バンドパスフィルタの回路合成理論を活用して、広帯域フィルテナの設計及び実験的検証を行った。その回路合成理論に則って設計できる新たな広帯域平面フィルテナ構造を提案した。その結果、中心周波数4GHz、比帯域20%、共振器5段(最終段はパッチアンテナ)の構成において、帯域内リターンロス15dB以上が得られ,広帯域にわたって優れたインピーダンス整合を実現するとともに、通過域では概ね平坦な利得特性ならびに阻止域では高減衰量を得ることに成功した。さらに、設計した広帯域フィルテナを試作し、電磁界解析結果と実験結果で良い一致が得られたことから提案構造の有効性を実証した。提案構造は4分の1波長短絡スタブとそれらを接続する4分の1波長伝送線路からなる簡易な構造であることから、波長の短いミリ波帯においては製作精度の問題を回避できると考えられる。 (II) 不要放射抑圧のためのフィルテナ設計の検討:フィルテナの特徴は、フィルタとアンテナの一体化設計によって通過域内でフラットな利得特性が実現できることであるが、阻止域ではフィルタの共振器からの不要放射により十分な減衰量が確保できるとは限らない。そこで、アンテナ層と共振器層の二層構造を採用したフィルテナ設計の検討も実施した。その結果、従来の単層平面構造に比べて阻止域の利得が10dB以上低下し、十分な減衰量が確保できる見通しが立った。広帯域フィルテナに本構造を用いれば、阻止域の遮断特性の大きな改善が見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最終目標であるミリ波帯広帯域フィルタリングアンテナ(フィルテナ)の実現に向けて、平成29年度は、マイクロ波帯における広帯域フィルテナの設計開発を主たる課題とした。研究の進捗状況は以下のとおりである。 (1) マイクロ波帯広帯域フィルテナの設計開発:当初の研究計画通り、広帯域フィルテナの設計開発に取組み、設計仕様を満足する広帯域フィルテナが設計でき、さらにその実験的検証を通して有効性も実証できた。また、今回設計した比帯域20%は、ミリ波帯の日米両方の60GHz帯無線システムの帯域幅をカバーできる帯域である。加えて、提案構造は微細構造が一切ないため、ミリ波帯においても製作精度が担保できる。よって、研究は最終目標のミリ波帯広帯域フィルテナの実現に向けて当初の計画通り順調に進んでいるものと考える。この研究成果は、電子情報通信学会技術報告ならびに総合大会においてすでに研究発表を行っている。 (2) 不要放射抑圧のためのフィルテナ設計の検討:阻止域における不要放射を抑圧するためのフィルテナ構造についての検討を実施した。その結果、共振器からの不要放射の抑圧によって阻止域の減衰量が確保できることがわかった。また、この検討を通して、初年度の課題であった放射Q値の低減と片側放射の両立できることも明らかとなり、研究計画書に挙げた利得の設計仕様を達成できる見込みが得られた。 このように研究は計画通りに遂行され、平成29年度も概ね順調に研究は進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ波帯広帯域フィルテナの設計開発が順調に進んでいることを受けて、提案書通り、最終年度(平成30年度)はミリ波帯広帯域フィルテナの設計開発に取り組む。特に、本年度は以下の2点を推進方策とする。 (1) ミリ波帯広帯域フィルテナの設計:平成29年度のマイクロ波帯広帯域フィルテナの設計結果を活かして、ミリ波無線システムの周波数帯域57GHz~66GHzでリターンロス10dB以上を達成できるミリ波帯広帯域フィルテナの設計を行う。ミリ波帯ではマイクロ波帯よりも誘電体基板の材料損失が利得劣化に大きく影響することが予想される。また、誘電体基板の厚みの選択はアンテナの放射Q値の設計範囲にも関わる。よって、これらを考慮しながら誘電体基板を選定し、ミリ波帯広帯域フィルテナの設計を行う。 (2) ミリ波帯広帯域フィルテナの実験的検証:設計したミリ波帯広帯域フィルテナを試作し、実験ではリターンロスの周波数特性、利得最大値の周波数特性ならびに放射パターンの測定を行う。実験によって57GHz~66GHzの帯域幅でリターンロス10dB以上と利得3dBi以上が達成できるか確認する。電磁界シミュレーション結果と実験結果に差異が生じた場合には、これらの比較検証によって問題点を明らかにし、課題解決を試みる。特に、材料損失の影響が大きい場合や製作上の問題が生じた場合には、ミリ波帯よりも波長が長く、次世代携帯電話網の周波数帯域である準ミリ波帯の28GHz帯で広帯域設計・試作測定を行うことも検討する。 以上の研究指針・計画によって、本研究課題の目標であるミリ波広帯域フィルテナの実現を目指す。
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Causes of Carryover |
理由:当初計画よりも多くの研究成果が得られたことに伴って旅費が増えたものの、次年度使用額は50千円未満であり、おおむね当初計画通り予算を執行した。よって、平成30年度における使用計画に大きな変更はない。
使用計画:次年度(平成30年度)の研究費は、当初予定の140万円と次年度使用額の約5万円の合計約145万円である。(1) 実験設備費・試作費(計56万円):ミリ波帯フィルテナの放射・利得測定を実施するために必要なミリ波標準利得ホーンアンテナ(1個20万円)を購入。ミリ波帯フィルテナの試作費(1回の試作費8万円、合計3回の試作を実施予定)、ならびに試作に必要な誘電体基板及び高周波部材費(12万円)を計上。(2) 成果発表のため国内外旅費(計57万円):国内会議では、電子情報通信学会ソサイエティ大会(9月、金沢大学)と総合大会(3月、早稲田大学)の旅費として計10万円、同学会マイクロ波研究会の発表(2回、場所は未定)の旅費として計7万円を計上。国際会議では、IEEE MTT-S IMS2018(6月、米国フィラデルフィア)及びAPMC2018(11月、京都)での研究発表の渡航旅費に40万円を計上する。(3) その他(計32万円):査読付き学術雑誌の論文掲載費(2件を予定)として20万円、国内外の学会発表投稿費として計7万円を計上。本研究課題の研究補助に係る謝金として5万円を計上。
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Research Products
(21 results)