2017 Fiscal Year Research-status Report
HDR画像のヒストグラム疎性を考慮した2階層HDR画像符号化
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16K18104
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
吉田 太一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (60737914)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | HDR画像符号化 / 二階層符号化 / 階調圧縮 / 最小二乗法 / 主成分分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では,本助成で得られた成果を国際会議で発表するとともに査読付き論文誌にて発表した.また,本年度で得られた成果を発展させて査読付き論文誌に投稿予定である.当成果は,HDR画像の画素値における疎性に着目しそのビット深度を圧縮する手法であり,また本研究をとおして得られた知見を他分野に発展させたものである.HDR画像は,画素あたり16bitの従来よりも大きなビット深度で表現されており,それは従来よりも広いかつ人の視覚とほぼ同等の輝度範囲で自然なシーンを表現するためである.それにより,非常に明るい領域も暗い領域も一枚の画像で同時に表現できる.しかし,同時に表現できるとともに,自然なシーンにおいてそれら輝度値は局在しているため,HDR画像の画素値において明るい領域を表現している帯域や暗い領域の帯域などが広く飛び飛びに分布しており,多くの場合に画素値のヒストグラムが疎になっている.本手法では,ヒストグラムが零の画素値をスキップし疎性を低減する可逆変換および頻度の少ない画素値を統合する処理を加えた誤差の少ない非可逆変換を提案しており,それによって入力信号のビット深度を低減し圧縮率向上に寄与している.また,それらの逆変換を実現するためのサイド情報を圧縮する符号化手法も提案している.論文では,主要なHDR画像フォーマットであるOpenEXR形式のHDR画像に対して適用し最新の二階層HDR画像符号化手法と比較し平均で約15%の圧縮率向上を達成している.また,上記手法を発展させて一般化し,HDR画像だけでなく様々な画像に対しての有効性を議論して論文として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,二階層HDR画像符号化の圧縮率を向上するために,提案法により整数値に変換したHDR画像のビット深度を圧縮する方法および原HDR画像と下位階層の画像から予測したHDR画像との差分を符号化する方法に関して検討を予定していた.前者は,原HDR画像の冗長性を削減しビット深度を低減することで圧縮率向上に寄与すると考えていた.研究実績の概要で示したとおり,HDR画像特有の画素値における疎性を基に,ロスレス圧縮を考慮した可逆な適応的ビット深度圧縮アルゴリズムを提案し,またそれによって発生するサイド情報の符号化アルゴリズムを提案した.一方で後者は,これまで提案してきた手法を用いて算出されたビット深度圧縮された原HDR画像と下位階層の画像から予測されたHDR画像との差分画像は一般的な画像と異なる性質があり,従来法の符号化方式をそのまま適用すると圧縮効率が損なわれる可能性があるので,その差分画像に適した符号化方式により圧縮率向上を図る予定であった.そのため,差分画像の無相関化およびエントロピー低減化を行う可逆な線形変換手法について検討を行った.その結果,局所領域に適応的な色方向に対して無相関化をおこなうKLTが有効であることが分かった.しかし,それによる圧縮率の向上はわずかであり,目的を達成するにはより効率的な変換および符号化手法の提案が必要である.さらに,二階層HDR画像符号化の国際標準方式JPEG XTが策定され,社会的意義を考えるとJPEG XTとの互換性を考慮したアルゴリズムを提案する必要があり検討を行っていた.以上より,当初の予定どおりではあるものの,JPEG XTを考慮したアルゴリズムでなくまた差分画像の符号化手法も確立できていないことから,進捗はやや遅れていると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度には,前述の差分画像を効率的に符号化する手法を確立し,JPEG XRを考慮した二階層符号化アルゴリズムを提案し発表する予定である.JPEG XRは,様々な処理を独立したブロックとして構成し,どの処理を用いるかをプロファイルと呼ばれる形式で規定しており,異なる圧縮効率を有する様々なプロファイルが用意されている.それは,近年の画像・動画像符号化方式における基本的な思想であり,提案するアルゴリズムでも当初から想定している.よって,提案アルゴリズムの大幅な変更はないが,JPEG XRは上位階層および下位階層の処理後画像を符号化するのにJPEGを採用しているため、少なくとも提案アルゴリズムでも下位階層の符号化はJPEGを基本とする必要がありそれに対処する予定である.一方で差分画像は,局所領域毎に画素の色方向に対する無相関化が圧縮に有効であったが,空間方向はビット深度圧縮もしくはエントロピー低減を達成する手法が提案できていない.なぜなら,それまでの処理により空間方向は雑音のような不規則な信号になっており,さらにその不規則さは画像毎に異なっているからである.これまで,多くのHDR画像における差分画像に共通する特性を見出すべく,様々な線形変換手法を提案し検証を行ったが有効な手法を実現するに至らなかった.今後は,従来の画像符号化で用いられている線形変換を基にした形式だけでなく,原信号をその信号数よりも少ない係数で表現できる技術であるコンプレッシブセンシングなどの非線形な変換や入力信号の乱性を考慮した符号化手法を視野にいれて,圧縮率と計算コストのトレードオフを踏まえて提案アルゴリズムを検討する予定である.
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Causes of Carryover |
主観評価実験用の高額なHDR画像表示デバイスを購入する予定であり,未だ予算よりも市場価格が高い状況であったため市場動向を注視する必要があった.また,初年度に購入した計算機が老朽化および移設作業のせいで十分な性能を発揮できない問題が発生し,また研究に関するソフトウェアを追加で購入する必要も発生している.そのため,最終的な予算の下で問題に対処すべく経過を観察する必要があったため次年度使用額は発生した. 件の表示デバイスを購入または計算機の復旧および追加購入のどちらを選択しても予算が余ることはないと考えている.件の表示デバイスは,次年度使用額と次年度配分予算額を合算したものに相当する購入額になると予想する.また,上記にある計算機の復旧費および追加購入費は次年度使用額よりも高いため,次年度配分予算を当初の計画どおり使用すれば予算があまることはないと考えている.
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