2018 Fiscal Year Research-status Report
HDR画像のヒストグラム疎性を考慮した2階層HDR画像符号化
Project/Area Number |
16K18104
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
吉田 太一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (60737914)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | HDR画像符号化 / 二階層符号化 / 階調圧縮 / 最小二乗法 / 主成分分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では,本助成で得られた成果を国際会議で発表するとともに査読付き論文誌にて発表した.また,本年度で得られた成果を整理し理論を洗練させて査読付き論文誌に投稿予定である.当成果は,HDR画像のコンテンツアウェア符号化に対する基礎的技術であり,段階的な重要領域を検出する手法である.本年度に発表した論文は,その研究における一段階目の成果であり,画像において確実に重要と非重要な領域を検出しその情報を伝搬させることで,重要な領域をその輪郭の欠損を抑えつつ検出する手法である.画像を局所領域に分割し,SIFTと呼ばれる各画素の特徴量を計算する技術を用いて特徴的な画素を検出,分割した局所領域におけるその特徴画素濃度から確実に重要と非重要である局所領域を定義した.それら情報を周辺領域との相関度を基に同時に伝搬させるアルゴリズを提案した.提案手法は,最新の従来手法と比較して様々なデータセットにおいて平均で約10%の正解率向上を達成した.また,その成果を発展させて段階的な重要度を有する領域を検出する手法を検討した.従来では重要か非重要かしか議論されておらず,重要領域における優劣性は考えられていなかった.しかし,段階的な優劣性がある方が応用において発展性が高いことは明白である.そこで,深層学習を用いた注視点確率を推定する技術を提案し,重要領域における注視点濃度を算出,それを基に段階的な重要度を推定する手法を実現した.その手法は,目的を実現しているとともに従来の評価方法において最新の従来手法より概ね優れたスコアを達成しており,成果を整理し発表する予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は,諸事情により研究進捗が大きく遅延し,そのため本年度が最終年度であったが期間延長を申請した.その遅延理由は承認され期間延長申請は受理された.よって,現在までの進捗状況は遅れていると言わざるを得ない. 本年度の計画は,HDR画像符号化における国際標準方式JPEG XTが本年度中に策定が完了するため,JPEG XTを考慮し比較して優れた圧縮率を実現する手法の確立であった.昨年度は,原HDR画像の冗長性削減および予測精度の向上を実現し,HDR画像のロスレス符号化において平均で約15%の圧縮率向上を達成した.それらの技術はJPEG XTの基本構造に組み入れられるものであったが,JPEG XTの思想と異なるHDR画像の二階層符号化方式を提案し,次世代の標準方式策定においてその多様性に寄与しようと考えた.目標は,HDRとLDRの復元画像が高いスケーラビリティを有する二階層符号化手法の確立である.よって,提案技術の基礎的な利点であるHDR画像信号の整数性を利用し,JPEG XTと同等以上の圧縮率でありかつ高いスケーラビリティを目指して研究を行った.昨年度成果は,圧縮率向上に大きく寄与しかつ信号の整数性を担保する技術であるが,その構造によって差分信号が一般的な画像信号とは異なるため,画像に用いられてきた従来のスケーラブル符号化はそのまま適用できない.そのため,提案技術に沿った符号化方式を検討していた.また,画像の局所領域毎に圧縮率を変更するコンテンツアウェア符号化を応用することを考え,段階的な重要領域の検出技術を検討した.第一段階の成果は既に発表し,また最終的な成果も概ね達成している.しかしながら,年度の途中から研究に集中できない環境となり,成果を整えて発表することができなかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は,前述のとおり延長申請が承認されたことによる追加の研究期間であるので,これまでの理論や成果を整え洗練させて発表するのが主な活動となる.高いスケーラビリティを有するHDR画像のコンテンツアウェア符号化を実現するための基礎技術として段階的な重要領域を検出する手法は概ね成果が出ておりそれらを発表する準備をしている.それらを含むこれまでの成果を基に,HDRとLDRの復元画像におけるスケーラビリティに着目したHDR画像二階層符号化方式を検討する.LDR画像側に関しては,従来の画像符号化手法が容易に適用でき,特に整数値から整数値への周波数変換を基にしたロスレス・ロッシー統合画像符号化方式が有効と考えられる.HDR画像側でも同様の検討を行ったが,符号化すべき差分信号はそれまでの処理により雑音のような不規則信号になっており,周波数成分の分解がそのまま画像の多重解像度化となりづらいため,従来方式を容易に拡張することはできなかった.よって,今後も同様の検討を行うとともに,空間上で適応的に圧縮率を変更するコンテンツアウェアを考慮して高いスケーラビリティを実現する手法を検討する予定である.
|
Causes of Carryover |
本年度は,前述のとおり諸事情によって研究進捗が大きく遅延し,そのため本年度が最終年度であったが期間延長を申請した.その期間延長申請は承認され受理された.よって,本年度で使用する予定であった成果発表用費や雑費等を次年度にて使用する必要があるため,次年度使用額が生じた. 上記理由にあるとおり,次年度使用は本年度で使用する予定であった内容を順延したものであるため使用計画も同様である.つまり,主な使用目的は研究成果発表用費と関連研究者との面談のための旅費である.研究成果発表用費は,国際会議等で発表を行うために必要な登録費および旅費と論文誌にて発表するための費用である.また,研究に必要な物品は概ね既に購入しているので大きな追加購入は必要ないが,故障等の状況の変化に応じて雑費等の必要が生じると予想される.
|