2016 Fiscal Year Research-status Report
体内診断に向けた磁気マーカーの高精度イメージング法の開発
Project/Area Number |
16K18114
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笹山 瑛由 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (60636249)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 磁気マーカー / 磁気粒子イメージング / 交流ヒステリシスループ / 磁気緩和 / 保磁力 / マイクロマグネティクシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノメートルサイズの強磁性体を高分子で被覆し、その表面に検査試薬や薬剤等を結合したものは磁気マーカーと呼ばれている。この磁気マーカーを体内の疾患部に蓄積させ、その位置と量を体表面から検出し可視化するイメージング技術(磁気粒子イメージング、MPI)は、新しい体内診断技術としてその開発が期待されている。本研究では、乳癌検査への応用を想定し、従来よりも高精度なMPIシステムの開発を行うことを目的としている。本年度は、生体内の磁気マーカーの磁気特性の解明を中心に研究を行った。 磁気マーカーの交流磁化特性は、ネール緩和およびブラウン緩和などの緩和時間の存在により、MPIの感度や空間分解能に影響を与える。磁気マーカーについて交流磁界の磁界強度および周波数を変化させながら交流ヒステリシスループの測定を行い、交流磁界の磁界強度および周波数が磁気マーカーの交流磁化特性に及ぼす影響について検討を行った。なお、生体内に磁気マーカーを導入したときにはブラウン運動が抑制されてネール緩和が支配的になると考えられるため、磁気マーカーを石膏で固相化して検討を行った。その結果、周波数が高くなるほど交流ヒステリシスループが開いていることが分かった。また、励起磁界が低磁界あるいは高周波であるほど高調波信号の減衰が大きくなっていることが分かった。この高調波信号の減衰について、ヒステリシスループの保磁力や磁化の分布に依存することを、マイクロマグネティクシミュレーションを利用して定量的に示した。また、保磁力により高調波信号を表現する簡易的な実験式を提案し、その実験式で測定値をよく近似できていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、生体内に磁気マーカーを導入したときの磁化特性の検証が目標であった。その目標を達成するため、磁気マーカーを石膏で固相化してそれを模擬した状態にし、交流磁界の磁界強度および周波数を変更しながら交流ヒステリシスループの計測データを収集し、そのデータについて検証を行った。その検証において、マイクロマグネティクシミュレーションの解析結果を利用し、高調波信号の減衰がヒステリシスループの保磁力や磁化の分布に依存することを示した。これにより、当初の計画を達成したといえる。 以上に加え、高調波信号の簡易的な実験式を提案し、その表現法が実験値をよく近似できていることを示したことから、当初の計画以上に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、細胞結合時の磁気マーカーの特性評価の定量性を高め、磁気マーカーからの信号磁界の詳細なモデルを確立する。また、この結果を基に計測システムを最適化し、マルチセンサを用いたイメージングシステムの高感度化を達成する。さらに、計測システムの高速化を行う。
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Research Products
(3 results)