2016 Fiscal Year Research-status Report
植物生体電位応答による知的環境モニタリングシステムと生理活性状態の定量的評価
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16K18125
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
柴田 慎一 大同大学, 情報学部, 講師 (50634309)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物生体電位 / 生育診断 / 環境モニタリング / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業従事者の減少などを端緒とする農作物栽培の効率化のためにAI農業やアグリセンシングといった農業分野における情報処理に関する農業情報学が注目されている。近年、注目されている生育環境を制御した施設栽培においては、生産性向上や設備・環境制御のコストダウンが求められており、そのためには植物の生育状態を定量的に計測することが必要不可欠である。これまでの農業情報として植物の生育環境が対象となることが多く、本研究では最適な生育環境の制御のために『植物の生体情報による環境情報』の取得・評価を目指す。具体的には、植物内部で発生する植物生体電位を用いて環境モニタリングを行い植物生理活性状態の定量的評価を試みる。植物生体電位は環境に影響し、特異な環境に対しては、その積分値が固有な値となることを確認している。そこで、植物生体電位の周波数成分の累積成分から環境モニタリングを試みた。環境要因と植物生体電位に関する実験を行い、植物生体電位の時系列データから機械学習による環境推論を行った。また、機械学習で使用する生体電位の特徴量についても検討を行った。解析方法としては、植物の光合成の評価指標として用いられるクロロフィル蛍光から生育状態の閾値を設定し、植物生体電位の周波数成分よる生育状態を診断する方法を検討した。環境要因としては、施設栽培でも環境計測の対象となっている pH による生育状態の実験を行った。ポトス、小松菜といった品種の異なる植物においても、植物生体電位の周波数成分を用いることで約80%程度の平均識別結果を得ることができた(植物生体電位を利用した生育状態の推定法に関する検討,2016)。また、主成分分析による次元削除を行った特徴量を使用した場合、累積周波数成分の特徴量を用いる場合に識別結果が高い傾向があることが分かった(植物生体電位の周波数特性を用いた生育状態の推定法に関する検討,2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題の進捗状況については、植物生体電位の積分値(特徴量)を用いた環境認識については個体差も含めて実験をすることができた。また、植物生体電位の時系列データから環境推論を行うことができた。ただ、当初購入予定だった実験装置の一部が諸事情により購入時期が遅れてしまったため、同時に行うはずだった実験に着手することができなかった。予算についても使用額に差が生じたが、現在翌年度の予算とあわせて購入を計画しており実施する予定である。また、本年度実施した研究の一部では被験植物の管理の段階で生育不良となり実験ができなかったことがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、(1)暗処理による生育障害時における植物生体電位応答、(2)植物生体電位の関数値から生育状態を導出、(3)pH・ECと植物生体電位の関係に関する実験を優先的に行っていく予定である。(1)については、これまでに除草剤による生育障害における生体電位応答の周波数成分に特徴があることを確認している。この除草剤は光合成の光阻害を引き起こす作用がある。ここでは、長期暗処理を施した光合成活動を伴わない植物生体電位の時間変化について検討し、光合成活動の有無による生育障害の生体電位応答について明らかにする。(2)では、これまでに研究課題で測定したデータを元に、植物生体電位の周波数成分による生育状態の識別に関する診断モデルを作成する。具体的には、各機械学習による評価実験を行う。(3)では、これまで研究してきたpH(水素イオン濃度)に加えて、EC(電気伝導度)も含めた生育状態の実験に取り組んでいく。これらは各濃度障害によって植物の栄養状態に影響を与えるため、各適正濃度下での濃度障害時における生体電位との関係を明らかにすることでより詳細な生育診断ができるものと考える。以上の(1)‐(3)の研究内容を軸として作業を進めていき、平成28年度で遅れが生じた内容についても実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初購入予定だった生体電位用アンプやデータロガーの実験装置の一部がメーカーの都合により当該年度より生産されなくなった。そのため、代替品の調査ならびに見積もりに時間を要し、研究課題の一部の作業に遅れが生じることとなった。また、一部の研究成果の報告についもて実施できていないため、旅費の支出総額にも差分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に購入できなかった生体電位用アンプやデータロガーなどの実験装置に関しては、すでに代替品を選定しており、翌年度分として請求した助成金とあわせて購入予定となっている。また、遅れが生じた分の国際会議での研究成果報告の作業にも取り組んでいくため、旅費費用の計上を予定している。
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