2016 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the mechanism of high strength development in concrete secondary products by autoclave curing
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16K18132
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山口 晋 日本大学, 生産工学部, 専任講師 (60582468)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オートクレーブ養生 / Tobermorite / C-S-H / 細孔空隙 / EPMA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主たる目的は,オートクレーブ養生による高強度発現機構を解明し,新しいオートクレーブ養生技術の実用化へ向けた高強度化理論の導出することである.平成28年度はこれを解明するにあたり,100時間を超える超長時間のオートクレーブ養生を実施したモルタル硬化体を用いて圧縮強度を測定し,強度発現の要因を細孔空隙,微細構造の観点から実験検討を行う予定であった.研究者によるこれまでの知見によれば,オートクレーブ養生によるコンクリートの高強度化には必須とされるトバモライトの生成量の増加に反比例して強度が低下することを予想していた. 実際の検討では,普通セメント,シリカ質混和材としてシリカフュームを用いることで,シリカフュームの添加率に関わらず,既往の研究により約150N・mm-2程度の強度発現が確実な配合を用いて検討を進める予定としていた.しかし,基本となるモルタルの強度が100N・mm-2に満たない強度発現しか得られない状況が続いた.そこで,上記材料を含めた,細骨材,高性能減水剤等の使用材料の影響,モルタルミキサーや蒸気養生・オートクレーブ養生装置等の観点から検討を重ねたが強度発現は認められなかった. 練混ぜ性状は高性能減水剤で調整し,モルタルフローを統一することで確認していたが,硬化した供試体を詳しく観察すると以前より気泡の数が増加していることがわかった.そこで10秒単位でテーブルバイブレーターによる締固め時間を検討し,圧縮強度による精査を行った.その結果をもとに高性能減水剤の影響を精査したところ,以前から使用していた同タイプとの成分が異なっていることが判明した.現在一般に流通されているタイプでは対応できないため,更に低空気連行タイプを特注し,消泡剤を併用しながら配合の再検討を行った.その結果,基本となる配合を確定させた.この配合を用いて平成29年度は各種検討を実施する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
既往の研究により約150N・mm-2程度の強度発現が明らかな配合を基本配合として検討を実施する予定であったが,その配合では100N・mm-2にも満たない強度発現しか得られない状況が続いた.そのため,各種試験に供するための供試体作製が行えず,基本配合の見直しを余儀なくされた. あらゆる観点から検証した結果,その原因は,使用している高性能減水剤の影響であることがわかった.使用していた高性能減水剤は,一般的に市販されているもので低空気連行タイプを用いていたが,作製したモルタルは微細な気泡が多く含まれ,強度発現に影響を及ぼしていた.なお,この高性能減水剤は過去の研究で得られた成果をもとに,全く同じ製品を用いていた.そのため,これらは製造ロットによる影響であると考えていたため,その他の使用材料を含め,新旧による影響が主な原因と考え,配合検討を繰返し行ったが,強度が全く改善されなかった. 更に詳細な検討を行った結果,使用している高性能減水剤によって空気連行過多となっていたことが判明した.そこで,過去の研究と同等のレベル低空気連行タイプを新たに特注し,消泡剤を併用しながら配合の再検討を行った.その結果,基本となる配合を確定させた.
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Strategy for Future Research Activity |
高性能減水剤の影響によって,本研究課題の進捗状況は遅れているが,現在入手できる高性能減水剤を用いた基本配合が確定しているため,計画より大分遅れているが計画通り,研究を遂行していく. 水セメント比は30%,シリカフュームの添加率を0%,5%,10%の3水準の配合でフロー値(250mm±10mm)となるように調整した新たな高性能含水剤タイプを使用して調整する.これを用いて作製したモルタル硬化体により,オートクレーブ養生温度を一般的な3時間に加え,10,30,50,100,200,300,500時間の合計8水準で検討を行う. 試験は,圧縮強度試験,水銀圧入式ポロシメーターを用いて細孔空隙測定,生成水和物の形態観察は,走査型電子顕微鏡によって観察を行う.また,生成水和物の定量測定は粉末X線回折により行う.これらを踏まえ,電子線マイクロアナライザーによる面分析を行いCa/Si比を算出し,上記で得られた高強度発現メカニズムの理論の裏付けを行う.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,本研究課題の主な研究経費となる「電子プローブマイクロアナライザによる分析委託業務」の実施が,平成29年度に遅延したことによる.この分析は,平成28年度中に超長時間のオートクレーブ養生を実施した供試体を用いて,圧縮強度,細孔空隙,生成水和物の定量測定を行った後,これらの結果の裏付けを行うための測定であるが,現在までの進捗状況で述べた通り,平成28年度は高性能AE減水剤の成分の変更に伴い,長時間のオートクレーブ養生を実施する以前のモルタル硬化体の圧縮強度において所定の圧縮強度が得られず,各種実験が遂行できなかったことによる.この分析は,生成水和物の組成分析を面分析によるCa/Si比の算出を行うものであり,本研究課題の核となる検討項目となるものであるため,平成28年度中に解決した基本配合を用いたモルタル硬化体によって各種試験を実施した後に確実に実施しなければならない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度7月中に圧縮強度,細孔空隙,生成水和物の定量測定を行い,8月から9月にかけて電子プローブマイクロアナライザによる分析を委託業務として実施する.
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