2016 Fiscal Year Research-status Report
津波流速低減効果を考慮した最適な海岸堤防構造の検討
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16K18153
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三戸部 佑太 東北大学, 工学研究科, 助教 (60700135)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海岸堤防 / 津波 / 越流 / 洗掘 / 防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
海岸堤防裏法尻の洗掘を対象とした先行研究の移動床実験結果をもと洗掘形状をモデル化し,その形状を使った固定床実験を行った.流速分布の画像計測結果から流れが3つの特徴的な流れ場に分類できることを示した.一つ目(Type1)は法尻通過後に流れが洗掘孔内に潜り込み底面に沿って強い流れが生じ,洗掘孔下流側において,そのまま陸側へ向かう流れと洗掘孔上の水面近くを上流に向かって戻る流れに分岐する.二つ目(Type2)の流れ場では法尻上で流れが斜め上方向に跳ねて,その落下点付近において,陸側へ向かう流れと底面近くを上流に向かって戻る流れに分岐する.三つ目(Type3)の流れ場では流れの分岐が生じずに洗掘孔底面に沿って陸側へ流れる.Type1および2では堤防裏法尻周辺で大規模な水平渦が発生し,これらの条件では陸側における流速が大きく低減される一方で,流れの分岐や渦が生じないType3においては流速の低減率が小さいことがわかった. 次に移動床実験を実施した.洗掘開始初期はType3のような流れが生じるが,ある程度洗掘孔が大きくなるとType1および2の流れが交互に生じながら洗掘が発達する.Type1の流れでは法尻付近の底面近くで流速が大きく,洗掘が急速に進む一方で,Type2の流れでは逆方向の水平渦により底面近くの流速が逆方向となり,埋め戻しが生じる.洗掘孔がない場合と比較して最大で40%程度,洗掘孔背後の流れのエネルギーが低減されることが明らかとなった.また,洗掘孔の大きさに対してエネルギーの減衰率が単調増加せず,最大値となる洗掘孔の大きさが存在することが分かった.また,津波被害関数との比較から比較的小規模な越流を生じる津波に対して,有意に被害率を低減し得ることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた固定床実験および移動床実験を実施し,海岸堤防裏法尻における流れ場の特性を把握するとともに,その洗掘過程との相互作用について重要な知見が得られた.また,洗掘孔による津波減勢効果について固定床・移動床の両実験から,その有意性が示された.次年度の数値計算に進む段階まで来ており,順調に研究が進展しているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は従来から予定していた通り,数値実験を取り入れてさらに詳細に津波減勢効果について議論する.数値実験では次の2つの点を検討する.一つ目として現地スケールでの再現計算を実施し,これとこれまでに得られている水理実験に基づいた洗掘および洗掘孔による津波減勢効果についての知見を合わせることで,現地スケールの現象に対してどの程度減勢効果が得られるかを明らかにする.また,水理実験や数値実験によって得られた洗掘形状の時間変化やそれに応じた津波減勢効果の変化を定式化し,津波遡上計算に組み込むことで,空間的な広がりのある実地形での数値計算をもとにその被害低減効果について議論する.
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Research Products
(2 results)