2016 Fiscal Year Research-status Report
堤防破壊確率を用いた破壊危険度の指標化と治水対策優先順位の検討方法
Project/Area Number |
16K18159
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
田端 幸輔 中央大学, 研究開発機構, 機構助教 (90756678)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 堤防 / 基盤 / 準二次元非定常浸透流解析 / 堤防破壊危険確率 / 堤防脆弱性指標 / 治水対策 / 堤防強化 / 破堤氾濫リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
洪水氾濫災害から人々の生活を守る役割を持つ河川堤防は,最も重要な治水施設である.近年の洪水頻発化,洪水外力の巨大化を踏まえると,洪水時における河川堤防の破壊の危険性を推定し,堤防弱点箇所の強化や堤防の危機管理対策を検討していくことは極めて重要な課題である. 本研究では,洪水時における堤体浸透による破壊危険箇所を推定することを目的とし,洪水水位,継続時間,堤体透水係数,堤防幅,堤防の空隙率の組み合わせによって表される堤防脆弱性指標を提示し,これが堤体浸透・裏法滑りによる破壊危険確率と高い相関を持つことを確認した.また,堤体直下の基盤が透水性である場合には,堤体に浸透した水の一部が基盤層に抜け出ることにより堤体内浸潤線が低下し,堤防脆弱性指標が減少することに着目し,これを表現できる準二次元非定常浸透流解析手法を開発した.本手法を,砂礫で構成された浸透性基礎に設置された実スケール堤防の越流破壊実験(千代田実験水路)で計測された堤体内浸潤線の時間変化データ(寒地土木研究所提供)を用いて検証し,解析法の妥当性を確認した. 更に,浸透による堤防決壊,法崩れ等の被災が生じた複数の河川堤防を対象に,堤防脆弱性指標と堤体被災の関係について分析を行った.この結果,堤防脆弱性指標の値と被災の種類及び密度には明瞭な関係があり,堤防脆弱性指標のとる値によって,堤体浸透,裏法滑り,堤防決壊のいずれの種類の被災が,どの程度発生するのかについて概ね推定可能であることを示した.本研究で得られた成果は,堤体浸透破壊の危険性から見た水防箇所の合理的な設定等を可能にするものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,堤体直下の基盤が透水性である場合における浸透現象を表現できる準二次元非定常浸透流解析手法を開発し,実スケール堤防の越流破壊実験(千代田実験水路)で計測された堤体内浸潤線の時間変化データ(寒地土木研究所提供)を用いて検証し,解析法の妥当性を確認した.更に,堤防脆弱性指標の値と被災の種類及び密度には明瞭な関係があり,堤防脆弱性指標のとる値によって,堤体浸透,裏法滑り,堤防決壊のいずれの種類の被災が,どの程度発生するのかについて概ね推定可能であることを示した.本研究で得られた成果は,堤体浸透破壊の危険性から見た水防箇所の合理的な設定等を可能にするものと考えられる.以上より,本研究は順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,河道掘削等の量的整備の必要性は,河道の流下能力やB/Cを指標として検討されてきた.これに対して,堤防強化による質的整備は,危機管理対策としての側面が強かった.しかし,洪水外力に対する河道水位と堤体内水位の挙動は,本来同じフレームで考えるべきであり,流下能力やB/C だけでなく,堤防の断面形状や土質特性に起因する破壊危険性を反映した新しい評価方法を構築する必要がある.そこで本研究では,堤防破壊危険確率及び堤防脆弱性指標を指標とした治水安全度評価により,実河川流域を対象に種々の治水対策の効果を分析するとともに,効率的な整備優先順位及び想定される破堤氾濫リスクについて検討する.
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Causes of Carryover |
初年度は国外の学会参加,現地調査が少なかったため. 次年度は国内外の学会等の参加,現地調査を予定している.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度の国内外の学会参加費,旅費および必要な消耗品費
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